遺言書作成の有無を調査する方法

遺言書の有無により相続手続きが変わっていきますので遺言書の有無は大変重要です。
ここでは相続開始後、相続人が遺言書の有無を調査する方法について解説します。

遺言書の有無を確認することの重要性

被相続人(死亡した人)の遺産は遺産分割の手続きを経ることにより各相続人に配分されますが、被相続人が遺言書を作成している場合は、共同相続人の協議による遺産分割より遺言書に書かれた遺産分割の内容が優先されます。

 

共同相続人による遺産分割協議を行う前に遺言書の有無を確認し、遺言書がなければ共同相続人の協議により遺産分割を行います。

 

遺産分割協議の成立後に遺言書が発見されると既に成立した遺産分割が覆るなどの問題が生じることがありますので、遺産分割協議を行う前に遺言書の有無を調査することが大切になります。

 

公正証書遺言作成の有無の調査方法

遺言検索システム
公正証書遺言は日本公証人連合会が管理する「遺言検索システム」により、全国のどの公証役場からでもその作成の有無等を調査することができます。

 

遺言検索システムの対象となる遺言書

原則 平成元年以降に作成された公正証書遺言
大阪公証人会所属の公証人が作成した遺言の場合 昭和55年以降に作成された公正証書遺言
東京公証人会所属の公証人が作成した遺言の場合 昭和56年以降に作成された公正証書遺言

 

遺言検索システムの利用方法

遺言検査区システムは全国各地の公証役場で利用が可能です。

遺言検索システムで分かること
・公正証書遺言又は秘密証書遺言の作成の有無
・遺言書を作成した公証人及び所属公証役場名
・遺言者の氏名・成年月日
・遺言書の作成年月日

遺言検索システムでは遺言の内容までは分かりませんので、遺言内容を知るには、遺言書が作成された公証役場で原本を閲覧するか謄本を取得する必要があります。

 

検索の請求ができる者
@遺言者が生存中
 遺言者のみ(その代理人を含む)
A遺言者の死亡後
 相続人、受遺者等の利害関係人(その代理人を含む)

 

必要書類
@相続人が請求する場合
・遺言者(被相続人)の死亡の記載がある戸籍謄本等
・相続人であることが確認できる戸籍謄本等
・請求者の本人確認書類(以下の(1)又は(2)のいずれか)
(1)印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)及び実印
(2)運転免許証、マイナンバーカード等の官公署発行の顔写真付身分証明書及び認印

 

A相続人の代理人により請求する場合
・遺言者(被相続人)の死亡の記載がある戸籍謄本等
・相続人であることが確認できる戸籍謄本等
・委任状(作成後3ヶ月以内の印鑑証明書付)
代理人の本人確認書類(以下の(1)又は(2)のいずれか)
(1)印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)及び実印
(2)運転免許証、マイナンバーカード等の官公署発行の顔写真付身分証明書及び認印

 

公正証書遺言の謄本請求

遺言検索システムにより公正証書遺言が作成されていることが判明しましたら、遺言公正証書原本が保管されている公証役場に遺言公正証書の謄本を請求します。

 

相続人が謄本請求するのに必要な書類
・遺言者(被相続人)の死亡の記載がある戸籍謄本等
・相続人であることが確認できる戸籍謄本等
・請求者の本人確認書類(以下の(1)又は(2)のいずれか)
(1)印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)及び実印
(2)運転免許証、マイナンバーカード等の官公署発行の顔写真付身分証明書及び認印

 

 

自筆証書遺言作成の有無の調査方法

令和2年7月10日からスタートした法務局による自筆証書遺言書の保管制度により、遺言者が自筆証書遺言書を法務局に預けた場合、遺言者の相続人等は自筆証書遺言が保管されているかどうか確認することができます。

 

遺言書保管事実証明書の交付請求の手続き

これは、相続人等が自筆証書遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを確認するための手続きです。

 

交付請求ができる遺言書保管所
全国の遺言書保管所(指定法務局)で交付請求することができます。

 

交付請求することができる者
遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等
上記の法定代理人(親権者、成年後見人など)も請求することができます。
但し、相続人等が交付請求するには、遺言者の死亡後に限ります。

 

交付請求の方法
遺言書保管所の窓口において交付請求する方法と郵送により請求する方法があります。

 

交付請求の手数料
1通につき800円です。

 

添付書類
@遺言者の相続人が交付請求する場合の書類
・遺言者の死亡したことが分かる戸籍謄本等
・相続人と遺言者の関係が分かる戸籍謄本等
・請求人の住民票の写し

 

A相続人の法定代理人が請求する場合
・上記書類の他、法定代理人であることを証する書面(作成後3ヶ月以内のもの)
戸籍謄本等(親権者の場合)
後見登記事項証明書(成年後見人の場合)

 

遺言書保管事実証明書の交付
交付請求により遺言書保管事実証明書が請求人に交付されます。

 

遺言書が保管されている場合、遺言書保管事実証明書には、申請に係る遺言書が遺言書保管所に保管され、遺言書保管ファイルに記録されていることを証明する旨、記載されています。

 

遺言書が保管されていない場合は、申請に係る遺言書が保管されていないこと証明する旨、記載されています。

 

遺言書が遺言書保管所に保管されていることが判明しましたら、遺言書情報証明書の交付請求を行います。

 

遺言書情報証明書の交付請求の手続き

これは、相続人等が遺言書保管所に保管されている遺言書の内容の証明書を取得するための手続きです。

 

交付請求することができる遺言書保管所
全国の遺言書保管所で交付請求することができます。

 

交付請求することができる者
遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等
上記の法定代理人(親権者、成年後見人など)も請求することができます。

 

交付請求の方法
遺言書保管所の窓口において交付請求する方法と郵送により請求する方法があります。

 

交付請求の手数料
1通につき1,400円

 

添付書類
@住所の記載がある法定相続情報一覧図の写しがある場合
・法定相続情報一覧図の写し

 

A住所の記載がない法定相続情報一覧図の写しがある場合
・法定相続情報一覧図の写し
・相続人全員の住民票の写し(作成後3ヶ月以内のもの)

 

B法定相続情報一覧図の写しがない場合
・遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票の写し(作成後3ヶ月以内のもの)

 

遺言書情報証明書の交付
遺言書情報証明書は相続登記、各種相続手続に利用することができます。
遺言書情報証明書により遺言を執行する場合は、家庭裁判所の検認は不要です。

 

遺言書を発見したときの手続(遺言検認)

遺言検認とは
遺言を執行するには、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。

 

遺言書の検認とは、遺言書の偽造や変造を防止するため、家庭裁判所が遺言書の形式やその他検認日現在の遺言書の形状を調査確認する手続きのことをいいます。

 

なお、この検認は遺言の有効無効を判断するための手続きではありません。
遺言の有効性を争うには、遺言無効確認の訴えを提起する必要があります

 

遺言書の検認が不要な場合
以下の場合、家庭裁判所で遺言書の検認を受ける必要はありません。
@遺言公正証書により遺言を執行する場合
A遺言書情報証明書(※)により遺言を執行する場合
※法務局による遺言書保管制度により保管された自筆証書遺言の内容について、遺言書保管所より証明を受けたもの

 

遺言書を発見したときにしてはいけないこと
@家庭裁判所の検認を受ける前に遺言を執行するこ
5万円以下の過料に処せられます。

 

A封印されている遺言書を家庭裁判所外で開封すること
5万円以下の過料に処せられます。

 

B遺言書を破棄、隠匿すること
不正な利益を得ることを目的とするこれらの行為は相続欠格事由に該当します。

 

遺言書検認手続き

申立場所 相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所
申立人 遺言書を保管している者又は遺言書を発見した相続人
申立期限 保管者は相続開始後、発見した相続人は発見後、遅滞なく申立てなければなりません。
申立費用

申立手数料 800円
郵便切手(額面及び内訳が家庭裁判所ごとに異なりますので実際に申立てるときは、管轄の家庭裁判所に確認してください。)

申立書類

申立書
戸籍謄本等
遺言書の原本

 

 

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