合名会社の設立手続きについて司法書士が解説

合名会社の設立手続きについて司法書士が解説致します。

 

合名会社とはどんな会社?

無限責任社員1名以上で構成される会社です。

 

無限責任社員は、借入金等の会社の債務を会社財産だけでは返済できない場合、個人の財産をもって全額返済しなければなりません。

 

株式会社が銀行から融資を受ける場合、オーナー社長が個人保証すれば、この借入金に関しては事実上、オーナー社長は無限責任を負うことになりますが、個人保証していない会社債務に関しては、個人財産で返済する義務は負いません。

 

それに対し、合名会社の無限責任社員は、個人保証の有無に関係なく、一切の会社債務に対して全額返済しなければならない非常に重い責任を負うことになりますので、無限責任社員となる場合は注意が必要です。

 

合名会社の無限責任社員は、原則、会社の業務を執行し、会社を代表することになります。

 

合名会社の設立手続き

定款の作成
合名会社を設立するには、社員となろうとする者が、定款を作成し、署名または記名押印する必要があります。
定款は代理人よって作成することも可能です。

 

合名会社の定款は、公証人の認証は不要です。

 

定款を書面により作成した場合、定款1通につき、4万円の印紙税を納付する必要があります。
(定款書面に4万円分の収入印紙を貼付する方法により納付します。)
なお、電子定款を作成した場合は、印紙税は課税されません。

 

定款で必ず定めなければいけない事項
合名会社の定款には、以下の事項は必ず記載しなければいけません。
この記載を欠く定款は、定款全体が無効になってしまいます。
@商号
A目的
B本店の所在地
C社員の氏名又は名称及び住所
D社員全員が無限責任社員とする旨
E社員の出資の目的及びその価額又は評価の基準

 

【無限責任社員1名の合名会社の定款例】

合名会社○○定款

(商号)
第1条 当会社は、合名会社○○と称する。@
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。A
1 ○○の売買
2 前号に附帯する一切の事業
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を○県○市に置く。B
(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載してする。
(社員の氏名、住所、出資及び責任)
第5条 社員の氏名及び住所、出資の価額並びに責任は次のとおりである。CE
無限責任社員
氏名 山田太郎
住所 ○○県○○市○○町○番○号
出資の価額 金1万円
2 当会社の社員は、すべて無限責任社員とする。D
(社員の相続)
第6条 社員が死亡した場合には、その相続人は、持分を承継して社員となることができる。
(事業年度)
第 7条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。

 

以上、合名会社○○の設立のため、この定款を作成し、社員が次に記名押印する。
令和○年○月○日
無限責任社員  山田太郎 印

 

本店所在場所の決定
定款で本店所在地を最小行政区画のみ(○○県○○市、東京都○○区等)を定めた場合、具体的な本店所在場所を社員が決定する必要があります。
本店所在場所の決定書を作成します。(設立登記の添付書面となります。)

 

出資の履行
合名会社の場合、会社成立前に出資が履行されている必要がありません。
会社設立後に、会社名義の銀行口座に出資金を振込めばOKです。

 

設立登記の申請
会社は、本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請することにより成立します。
合名会社の設立登記の添付書類
・定款
・本店所在場所の決定書
・印鑑届書
代表社員は法務局に印鑑登録(会社実印の登録)を行います。
印鑑登録は、印鑑届書を提出する方法により行います。
印鑑届書には、代表社員の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)を添付する必要があります。
※無限責任社員1名の合名会社の場合、その者が当然代表社員となります。

 

設立登記の登録免許税
合名会社の設立登記の登録免許税は6万円です。