
遺言により不動産が信託された場合に必要となる登記手続きについて解説します。
遺言により設定される信託のことを遺言信託といいます。
受託者に対して、財産の譲渡等の処分をする旨、並びに受託者が一定の目的に従い財産の管理又は処分その他の当該目的を達成するために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法により設定される信託
遺言信託は、遺言の効力発生によりその効力を生じます。
遺言は原則、遺言者(委託者)の死亡によりその効力を生じますので、遺言信託は、遺言者(委託者)の死亡によりその効力を生じることになります。
遺言の方式に関して、信託法では何ら定められていないので、遺言の方式は民法の規定に従うことになります。
遺言信託は公正証書遺言によりなされることが多いと思われますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言でも可能です。
遺言信託が自筆証書遺言又は秘密証書遺言によりなされた場合、遺言を執行するには家庭裁判所の検認手続きが必要になります。(但し、法務局による遺言保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要)
遺言信託が公正証書遺言によりなされた場合は、家庭裁判所の検認手続きは不要です。
遺言執行者により、信託財産を受託者に引き継ぎます。
また、受託者への所有権移転登記の申請義務を負います。
遺言執行者は遺言により指定されることが多いと思いますが、遺言にその指定がないとき、指定はあるが遺言執行者に就任できないときなどは、信託の当事者は利害関係人として、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てを行うことができます。
信託により所有権移転登記
信託により信託不動産の所有権が遺言者(委託者)から受託者へ移転するので、登記権利者である受託者と登記義務者である遺言執行者の共同申請により信託による所有権移転登記を申請します。
信託登記
信託不動産が受託者の固有財産でなく信託財産であることを公示するために受託者は信託登記を申請します。
信託による所有権移転登記と信託登記は同時に申請しなければなりません。
・遺言者(委託者)X(令和2年12月1日死亡)
・受託者Y
・受益者T
・遺言執行者S
・信託不動産
土地 2,000万円(固定資産税評価額)
建物 1,000万円(固定資産税評価額)
登記申請書
登記の目的 所有権移転及び信託
原 因 令和2年12月1日遺言信託
権 利 者 ○○県○○市○○町○丁目○番地
Y
義 務 者 ○○県○○市○○町○丁目○番地
X
義務者代理人 ○○県○○市○○町○丁目○番地
遺言執行者S
添付書面
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書
住所証明情報 代理権限証明情報
信託目録に記録すべき情報
登記識別情報通知書及び登記完了証は登記所での交付を希望します。
令和○年○月○日申請 ○○法務局 御中
課税価格
土地 金2,000万円
建物 金1,000万円
登録免許税 金10万円
内訳
所有権移転分 登録免許税法7条1項1号により非課税
信託分 土地 金6万円(租税特別措置法72条1項)
建物 金4万円
不動産の表示
【省略】
信託目録に記録すべき情報
委託者 ○○県○○市○○町○丁目○番地
Y
受託者 ○○県○○市○○町○丁目○番地
X
受益者 ○○県○○市○○町○丁目○番地
T
信託条項
一 信託の目的
【省略】
二 信託財産の管理方法
【省略】
三 信託の終了事由
【省略】
四 その他信託条項
【省略】
【登記に必要となる書類】
具体的な書面 | |
登記原因証明情報 | 遺言書+戸籍謄本(遺言者の死亡の記載があるもの) |
登記識別情報 | 遺言者の登記識別情報通知書又は登記済証 |
印鑑証明書 | 遺言執行者の作成後3ヶ月以内の印鑑証明書 |
住所証明情報 | 受託者の住民票の写し |
代理権限証明情報 |
・遺言書又は家庭裁判所の選任審判書(遺言執行者の権限を証する書面) |
信託目録に記録すべき情報 |
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