不動産を遺贈されたときの登記手続き

ここでは、不動産を遺贈されたときの登記手続きについて司法書士が解説します。

 

遺贈とは
遺贈者が遺言よって行う、包括又は特定の名義での、その財産の全部または一部の無償譲与とことをいいます。

【包括遺贈の遺言書記載例】
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、○○○○に包括して遺贈する。

 

【一部包括遺贈の遺言書記載例】
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち2分の1を、○○○○に包括して遺贈する。

 

【特定遺贈の遺言書記載例】
第○条 遺言者は、その所有する次の不動産を、○○○○に遺贈する。
不動産の表示(省略)

 

遺言執行のための事前手続(家庭裁判所の検認)

遺言書の検認
不動産の遺贈を受けたときは、最終的に登記名義を遺言者から受遺者(遺贈を受けた者)に移転する(遺贈による所有権移転登記の申請)必要がありますが、その前段階として当該遺言書につき、検認と呼ばれる手続きを受ける必要があります。

 

遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡後遅滞なく、その遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を受けなければならないとされています。

 

遺言書の検認が不要な場合
公証人が作成した遺言書(公正証書遺言)または自筆証書遺言のうち法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けることなく、直ちに、遺言を執行することができます。

 

遺言の執行(遺贈による所有権移転登記の申請手続)

不動産の遺贈を受けたときは、不動産所在地を管轄する法務局に名義変更の登記を申請します。
この登記の申請は、受遺者(遺贈を受けた者)と遺贈義務者が申請人になります。

 

遺贈義務者
(1)遺言執行者があるとき
遺言執行者が遺贈義務者となります。

 

@遺言書に遺言執行者の指定があるとき
遺言執行者に指定された者が、その就職を承諾することにより遺言執行者に就任します。
遺言執行者の指定を第三者に委託しているときは、当該第三者が遺言執行者を指定し、第三者委により指定された者が、その就任を承諾することにより遺言執行者に就任します。

 

受遺者の催告権
遺言執行者に指定された者が、遺言執行者に就職するかどうかを明らかにしないときは、受遺者は、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するか否かを確答すべき旨を、遺言執行者に指定された者に催告することができます。
もし、その期間内に確答がないときは、指定された者がその就職を承諾したものとみなされます。

 

A家庭裁判所による遺言執行者の選任
遺言執行者がないとき、またはいなくなっときは、受遺者は、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことができます。
遺言執行者の選任の必要があると認めるときは、家庭裁判所は遺言執行者を選任します。

 

(2)遺言執行者がいないとき
遺言者の相続人全員が遺贈義務者になります。

 

登記申請手続きに必要な書類

登記原因証明情報
遺言書および遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
※検認が必要な場合は、家庭裁判所の検認済の遺言書

 

権利証
※遺言者の登記済証または登記識別情報を提供します。
紛失等により遺言者の登記済証等を提供できないときは、@登記官による事前通知制度を利用する方法、A司法書士等の資格者代理人が作成した本人確認情報を提供する方法、B公証人の認証を受けた委任状を提供する方法のいずれかにより登記申請を行います。

 

印鑑証明書
遺贈義務者(遺言執行者(遺言執行者がないときは遺言者の相続人全員)の作成後3ヶ月以内の印鑑証明書を提供します。

 

住民票等
住民票、印鑑証明書、戸籍の附票等、受遺者の住所を証明する書類を提供します。

 

遺贈義務者の権限を証明する情報
(1)遺言執行者の場合
@遺言書により指定された遺言執行者の場合
当該遺言書および遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本が遺言執行者の権限を証する情報になります。

 

A家庭裁判所により選任された遺言執行者の場合
遺言書及び家庭裁判所の選任に係る審判書がその権限を証する情報となります。

 

(2)相続人の場合
遺言者の相続人であることを証明するため、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本等を提供します。

 

固定資産税評価証明書
登録免許税の課税価格を証明するため提供します。

 

登記申請手続きの登録免許税

遺贈による登記名義の変更手続きを行うには、所定の登録免許税を納付する必要があります。
受遺者が遺言者の相続人か、それ以外の者かにより登録免許税の税率が異なります。

受遺者が遺言者の相続人の場合
固定資産税評価額×4/1000(0.4%)

 

受遺者が遺言者の相続人以外の者の場合
固定資産税評価額×20/1000(2%)

 

遺言者の最後の住所と登記記録(登記簿)上の住所が一致しないとき

遺贈による所有権移転登記の申請の前提等して、登記名義人住所変更登記の申請が必要になります。
この登記は、遺言執行者がいるときは遺言執行者が、いないときは遺言者の相続人が申請します。
また、受遺者も代位により申請することもできます。

 

遺贈された不動産が農地(田・畑)の場合

受遺者が遺言者の相続人の場合、農地法の許可は必要ありませんが、受遺者が遺言者の相続人以外の者であるときは、農地法の許可が必要になり、農地法の許可書が遺贈による所有権移転登記の添付書類の一部となります。

 

遺贈放棄の手続き

受遺者は、遺贈を受けることを望まないときは、遺贈を放棄することができます。

 

包括遺贈を受けた場合
包括遺贈は、相続と同様に扱われるので、包括遺贈を放棄する場合は、相続放棄と同様に、自己のために遺贈があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に放棄の申述をする必要があります。

 

特定遺贈を受けた場合
受遺者はいつでも特定遺贈を放棄することができます。
特定遺贈の放棄の方式については特別の定めがないことから、口頭による意思表示で差し支えないと解されています。また、放棄の意思表示は、遺言執行者がいるときは遺言執行者に、遺言執行者がいないときは遺言者の相続人に対して行えばよいと解されています。

 

 

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