不動産を信託したときに必要となる登記

不動産を信託したときは、登記手続が必要になります。
信託設定時、信託期間中及び信託終了時に必要となる登記手続きについて説明します。

信託設定時の登記

信託設定において、不動産を信託財産としたときは、委託者から受託者への所有権移転登記と信託登記の申請が必要になります。

 

信託登記の意義

対抗要件を具備するための信託登記
(信託法14条)

不動産を信託したときは、信託の登記をしないと、当該不動産が信託財産であることを第三者に主張することができない。

分別管理義務履行のための信託登記
(信託法34条)

受託者は信託財産と固有財産を分別して管理しなければならず、信託財産が不動産の場合の分別管理方法は、信託の登記である。

 

信託設定時の登記

申請する登記

所有権移転登記及び信託登記
(同一書面により同時に申請)

管轄 不動産の所在地を管轄する法務局
申請人 所有権移転登記

委託者と受託者
(共同申請)

信託登記

受託者
(単独申請)

登録免許税(登記手数料) 所有権移転登記

非課税
(登録免許税法7条1項)

信託登記

【土地】
固定資産税評価額の3/1000(0.3%)
(租税特別措置法72条2項2号)
※令和3年3月31日までに申請

【建物】
固定資産税評価額の4/1000(0.4%)

登記必要書類

・登記申請書
・登記原因証明情報
・信託目録に記録すべき情報
・委託者の登記識別情報または登記済証
・委託者の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
・受託者の住所証明情報(住民票等)
・代理権限証明情報(委任状)
・固定資産税評価証明書

 

信託期間中の登記

委託者の変更

委託者の氏名・住所は、信託登記の登記事項(信託目録に記録)であり、委託者に変更が生じたときは、信託目録の変更の登記を申請しなければなりません。

 

委託者の地位の移転
「委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、又は信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。(信託法146条)」とされています。

 

また、委託者が死亡したときは、委託者の地位は、その相続人に承継されると解されています。

 

信託行為による別段の定め
信託行為に別段の定めを設けることにより、委託者が死亡した場合にその地位を承継する者を定めたり、委託者が死亡したときは、委託者の地位は消滅する(相続されない)旨を定めたりすることができるとされています。

 

委託者変更の登記

申請する登記 委託者変更の登記
申請人 受託者(単独申請)
登録免許税(登記手数料) 信託不動産1個につき1,000円
登記必要書類

・登記申請書
・登記原因証明情報
・代理権限証明情報(委任状)

 

受託者の変更

受託者に変更が生じたときは、受託者変更による所有権移転登記の申請が必要になります。
受託者変更による所有権移転登記を申請したときは、登記官の職権により信託の変更登記(信託目録の変更)がなされます。

 

受託者の任務終了
受託者の任務は、受託者の死亡、辞任等により終了します。
信託行為に後継受託者の指定に関する定めがあり、その者が就任を承諾すれば新受託者に就任します。

 

信託行為に後継受託者の指定に関する定めがない、または、指定はあるものの、指定された者が就任を承諾しないときは、委託者及び受益者はその合意により、後継受託者を選任することができます。

 

受託者変更の登記

申請する登記 所有権移転登記
申請人 受託者辞任の場合

旧受託者と新受託者
(共同申請)

受託者死亡の場合

新受託者
(単独申請・不動産登記法100条1項)

登録免許税

非課税
(登録免許税法7条1項3号)

登記必要書類 受託者辞任の場合

・登記申請書
・登記原因証明情報
・旧受託者の登記識別情報または登記済証
・旧受託者の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
・新受託者の住所証明情報(住民票等)
・代理権限証明情報(委任状)

受託者死亡の場合

・登記申請書
・登記原因証明情報
※受託者の死亡の記載のある戸籍謄本等及び新受託者の就任承諾書
・新受託者の住所証明情報(住民票等)
・代理権限証明情報(委任状)

 

受益者の変更

受益者の氏名・住所は、信託登記の登記事項(信託目録に記録)であり、受益者に変更が生じたときは、信託目録の変更の登記を申請しなければなりません。

 

受益権の譲渡
受益者は、その性質上、譲渡が許されない場合を除き、受益権を譲渡することができます。
受益権を売買したときは、受益権が買主に移転し、受益者が変更されますので、受益者変更の登記を申請します。

 

受益権の相続
受益者が死亡した場合、その受益権は原則、相続人に承継されます。

 

後継ぎ遺贈型受益者連続信託
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定めのある信託のこと。
当初受益者が死亡した場合、その受益権は消滅し、後継受益者に指定された者が新たな受益権を取得することになりますので、受益者変更の登記を申請します。

 

受益権変更の登記

申請する登記 受益者変更の登記
申請人 受託者(単独申請)
登録免許税(登記手数料) 信託不動産1個につき1,000円
登記必要書類

・登記申請書
・登記原因証明情報
・代理権限証明情報(委任状)

 

信託不動産を売却したとき

受託者が信託不動産を売却すると、当該不動産は信託財産から外れ、買主固有の財産になるため、買主への所有権移転登記及び信託登記抹消の登記を申請します。
所有権移転登記と信託登記抹消登記は、同時に同一の書面により申請します。

 

信託不動産を売却したときの登記

申請する登記 所有権移転登記及び信託登記抹消登記
申請人 所有権移転登記

買主と受託者(売主)
(共同申請)

信託登記抹消

受託者
(単独申請)

登録免許税 所有権移転登記

【土地】
固定資産税評価額の15/1000(1.5%)(租税特別措置法72条1項1号)
※令和3年3月31日までに申請

【建物】
固定資産税評価額の20/1000(2%)

信託登記抹消 信託不動産1個につき1,000円
登記必要書類

・登記申請書
・登記原因証明情報
・受託者の登記識別情報または登記済証
・受託者の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
・買主の住所証明情報(住民票等)
・承諾書
※信託条項に信託不動産を譲渡するには第三者の承諾を要する旨の定めがある場合
・代理権限証明情報(委任状)
・固定資産税評価証明書

 

信託終了時の登記

信託が終了すると、清算受託者により清算手続きがなされます。
信託に係る債権債務を清算したのち、残余財産を残余財産受益者又は帰属権利者に引き継ぎます。
帰属権利者等に引き継いだ残余財産は信託財産から帰属権利者との固有財産になります。
残余財産が不動産の場合、受託者から帰属権利者等への所有権移転登記と、信託登記抹消の登記を申請します。
信託財産の引き継いだときの登記

申請する登記 所有権移転登記及び信託登記抹消登記
申請人 所有権移転登記

帰属権利者等と受託者
(共同申請)

信託登記抹消

受託者
(単独申請)

登録免許税 所有権移転登記

【原則】
固定資産税評価額の20/1000(2%)

【特例】
固定資産税評価額の4/1000(0.4%)
登録免許税法7条2項の適用がある場合

信託登記抹消 信託不動産1個につき1,000円
登記必要書類

・登記申請書
・登記原因証明情報
・受託者の登記識別情報または登記済証
・受託者の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
・帰属権利者等の住所証明情報(住民票等)
・代理権限証明情報(委任状)
・固定資産税評価証明書

 

 

登録免許税7条2項
 信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合であつて、かつ、当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(当該委託者が合併により消滅した場合にあつては、当該合併後存続する法人又は当該合併により設立された法人)であるときは、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続(当該受益者が当該存続する法人又は当該設立された法人である場合にあつては、合併)による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。

 

 

 

 

信託登記に関するお問い合わせ

登記に関することならどんな些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
1 お電話によるお問い合わせ 
  052-848-8033

 

2 お問い合わせフォームからのお問い合わせ

 

お電話は平日10時から20時まで受け付けております。土日祝日は休業日ですが、事務所にいる時は対応いたしますので、一度おかけになってみてください。

 

お問い合わせフォームからのお問い合わせに対しては原則24時間以内に返信します。
(複雑で調査を要するお問い合わせは、回答までにお時間を頂くことがございます。)

 

正式なご依頼前に、見積手数料、相談料等の名目で費用を請求することは一切ございませんので、安心してお問い合わせください。

 

〒467−0056 
名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 
瑞穂ハイツ403号
司法書士八木隆事務所