
不動産を信託したときは、登記手続が必要になります。
信託設定時、信託期間中及び信託終了時に必要となる登記手続きについて説明します。
信託設定において、不動産を信託財産としたときは、委託者から受託者への所有権移転登記と信託登記の申請が必要になります。
信託登記の意義
対抗要件を具備するための信託登記 |
不動産を信託したときは、信託の登記をしないと、当該不動産が信託財産であることを第三者に主張することができない。 | |
分別管理義務履行のための信託登記 |
受託者は信託財産と固有財産を分別して管理しなければならず、信託財産が不動産の場合の分別管理方法は、信託の登記である。 |
信託設定時の登記
申請する登記 |
所有権移転登記及び信託登記 |
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管轄 | 不動産の所在地を管轄する法務局 | |
申請人 | 所有権移転登記 |
委託者と受託者 |
信託登記 |
受託者 |
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登録免許税(登記手数料) | 所有権移転登記 |
非課税 |
信託登記 |
【土地】 |
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【建物】 |
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登記必要書類 |
・登記申請書 |
委託者の氏名・住所は、信託登記の登記事項(信託目録に記録)であり、委託者に変更が生じたときは、信託目録の変更の登記を申請しなければなりません。
委託者の地位の移転
「委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、又は信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。(信託法146条)」とされています。
また、委託者が死亡したときは、委託者の地位は、その相続人に承継されると解されています。
信託行為による別段の定め
信託行為に別段の定めを設けることにより、委託者が死亡した場合にその地位を承継する者を定めたり、委託者が死亡したときは、委託者の地位は消滅する(相続されない)旨を定めたりすることができるとされています。
委託者変更の登記
申請する登記 | 委託者変更の登記 | |
申請人 | 受託者(単独申請) | |
登録免許税(登記手数料) | 信託不動産1個につき1,000円 | |
登記必要書類 |
・登記申請書 |
受託者に変更が生じたときは、受託者変更による所有権移転登記の申請が必要になります。
受託者変更による所有権移転登記を申請したときは、登記官の職権により信託の変更登記(信託目録の変更)がなされます。
受託者の任務終了
受託者の任務は、受託者の死亡、辞任等により終了します。
信託行為に後継受託者の指定に関する定めがあり、その者が就任を承諾すれば新受託者に就任します。
信託行為に後継受託者の指定に関する定めがない、または、指定はあるものの、指定された者が就任を承諾しないときは、委託者及び受益者はその合意により、後継受託者を選任することができます。
受託者変更の登記
申請する登記 | 所有権移転登記 | |
申請人 | 受託者辞任の場合 |
旧受託者と新受託者 |
受託者死亡の場合 |
新受託者 |
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登録免許税 |
非課税 |
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登記必要書類 | 受託者辞任の場合 |
・登記申請書 |
受託者死亡の場合 |
・登記申請書 |
受益者の氏名・住所は、信託登記の登記事項(信託目録に記録)であり、受益者に変更が生じたときは、信託目録の変更の登記を申請しなければなりません。
受益権の譲渡
受益者は、その性質上、譲渡が許されない場合を除き、受益権を譲渡することができます。
受益権を売買したときは、受益権が買主に移転し、受益者が変更されますので、受益者変更の登記を申請します。
受益権の相続
受益者が死亡した場合、その受益権は原則、相続人に承継されます。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定めのある信託のこと。
当初受益者が死亡した場合、その受益権は消滅し、後継受益者に指定された者が新たな受益権を取得することになりますので、受益者変更の登記を申請します。
受益権変更の登記
申請する登記 | 受益者変更の登記 | |
申請人 | 受託者(単独申請) | |
登録免許税(登記手数料) | 信託不動産1個につき1,000円 | |
登記必要書類 |
・登記申請書 |
受託者が信託不動産を売却すると、当該不動産は信託財産から外れ、買主固有の財産になるため、買主への所有権移転登記及び信託登記抹消の登記を申請します。
所有権移転登記と信託登記抹消登記は、同時に同一の書面により申請します。
信託不動産を売却したときの登記
申請する登記 | 所有権移転登記及び信託登記抹消登記 | |
申請人 | 所有権移転登記 |
買主と受託者(売主) |
信託登記抹消 |
受託者 |
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登録免許税 | 所有権移転登記 |
【土地】 |
【建物】 |
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信託登記抹消 | 信託不動産1個につき1,000円 | |
登記必要書類 |
・登記申請書 |
信託が終了すると、清算受託者により清算手続きがなされます。
信託に係る債権債務を清算したのち、残余財産を残余財産受益者又は帰属権利者に引き継ぎます。
帰属権利者等に引き継いだ残余財産は信託財産から帰属権利者との固有財産になります。
残余財産が不動産の場合、受託者から帰属権利者等への所有権移転登記と、信託登記抹消の登記を申請します。
信託財産の引き継いだときの登記
申請する登記 | 所有権移転登記及び信託登記抹消登記 | |
申請人 | 所有権移転登記 |
帰属権利者等と受託者 |
信託登記抹消 |
受託者 |
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登録免許税 | 所有権移転登記 |
【原則】 |
【特例】 |
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信託登記抹消 | 信託不動産1個につき1,000円 | |
登記必要書類 |
・登記申請書 |
登録免許税7条2項
信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合であつて、かつ、当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(当該委託者が合併により消滅した場合にあつては、当該合併後存続する法人又は当該合併により設立された法人)であるときは、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続(当該受益者が当該存続する法人又は当該設立された法人である場合にあつては、合併)による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。
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