土地賃借権を目的とする質権の登記

土地賃借権を目的とする抵当権設定はできない
民法上、抵当権の目的とすることができる権利は、不動産所有権、地上権及び永小作権に限られており(民法第369条)、土地賃借権を目的として抵当権を設定することはできません。

賃借権と借地権の違い
賃借権とは、賃料を支払って目的物を使用、収益をすることができる権利のことであり、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことをいいます。(借地借家法第2条)
建物所有を目的とする土地賃借権は、借地権として借地借家法が適用され、賃借人(借地人)の権利が強く保護されています。

 

土地賃借権を目的に質権を設定することができる
賃借権を目的とする担保設定の方法として、質権を設定する方法があります。
質権は、譲渡することができない物でなければ、不動産、動産、債権を問わず、設定することが可能であり、債権である賃借権にも質権を設定することができます。

 

借地権が賃借権の場合、建物に設定された抵当権の効力は建物に従たる権利である借地権に及ぶ(※判例)ので、建物に抵当権設定登記をしておけば、借地権についても対抗力を取得することになるのですが、あえて、賃借権たる借地権に質権を設定することにより権利保全を行うことがあると言われています。

最高裁判例
借地人が所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、建物の所有権が競落人に移転したときは、特段の事情がない限り、建物の所有に必要な敷地の借地権も競落人に移転する。(最判昭40年5月4日)

 

賃借権を目的とする質権設定の流れ
@質権設定契約
債権者(質権者)と土地賃借人(設定者)との間で質権設定契約を締結します。

 

質権設定契約は要物契約であり、その成立には目的物の引渡しが要件となる(民法第342条)ことから、土地賃借権に質権を設定する場合でも、目的物を質権者に引き渡す必要があるとの見解と、賃貸人への通知又は承諾があれば引渡しまでは不要とする見解があります。

 

A賃貸人の承諾
賃借権の譲渡又は賃借物の転貸は、賃貸人の承諾が必要であり、無断譲渡及び無断転貸は、賃貸借契約の解除原因となります。(民法第612条)

 

土地賃借権に質権を設定する行為は、賃借権の処分に該当するので、「譲渡、転貸ができる」旨の特約がなければ、土地賃借権に質権を設定するには、賃貸人の承諾が必要となります。

 

なお、実務では、土地賃借権を目的に質権設定契約を締結する場合、「質権を設定すること」及び「質権実行により、賃借権が第三者に移転される場合は、その第三者との間で引き続き賃貸借関係を継続すること」の承諾を、賃貸人から取り付けていると言われています。

 

B質権設定登記
土地賃借権を目的とする質権は登記により公示することができ、対抗力を取得することができます。
なお、土地賃借権を目的とする質権の登記を行うためには、賃借権の登記がなされている必要があります。

 

 

【権利部乙区】(土地賃借権を目的とする質権設定登記)

順位番号 登 記 の 目 的 受付年月日・受付番号 権 利 者 そ の 他 の 事 項

1

 

 

 

 

 

 

 

付記1号

賃借権設定

平成25年○月○日
第○○○○号

原因 平成25年○月○日設定
目的 建物所有
賃料 1月金○○円
支払時期 毎月末日
存続期間 50年
特約 借地借家法第22条の特約
賃借権者 ○○市○○町○丁目○番地
 甲 野 太 郎

1番賃借権質権設定

平成25年○月○日
第○○○○号

原因 平成25年○月○日金銭消費貸借同日設定
債権額 金○○○○円
利息 年○%
損害金 年○%
債務者 ○○市○○町○丁目○番地
 甲 野 太 郎
権利者 ○○市○○町○丁目○番地
 株式会社乙銀行

上記は、存続期間50年の一般定期借地権を目的として質権設定登記がなされた場合の登記記載例です。

 

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