合同会社の設立登記

会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つの形態が会社法で定められています。
このうち合同会社は、新会社法(平成18年5月施行)で初めて認められた会社形態です。

 

法務省の統計によると、平成30年の会社の設立登記の件数は、株式会社が86,993件、合名会社が87件、合資会社が52件、合同会社が27,270件となっています。

 

 

合同会社と株式会社の比較

今なお、株式会社が設立登記件数の約76%と高い割合を占めていますが、合同会社の設立件数はここ10年あまりで4倍以上の高い伸び率(平成19年の設立件数は、6,076件)を示しており、合同会社も社会的にかなり認知されてきております。

 

会社の設立を検討する場合、株式会社又は合同会社のいずれかを選択することになると思われます。

 

会社形態には、その他に合名会社及び合資会社がありますが、上記のとおり設立件数はいずれも100件に満たず、合名会社は社員が無限責任といった重い責任を負いますし、合資会社は、設立時において社員2以上が必要で、そのうち1人は無限責任を負うことから、いずれも出資者(社員)は大きなリスクを負うことになりますので、会社設立の選択肢に含める必要はないでしょう。

 

 

合同会社設立のメリット

株式会社の設立と比較しながら、合同会社設立のメリットとデメリットを解説します。

 

1 定款認証が不要である
株式会社を設立するには、設立しようとする会社の本店所在地の公証役場において、その定款につき公証人の認証を受けなければならないのに対し、合同会社を設立する場合には、公証人の認証は不要です。

 

株式会社を設立するには、定款認証を受けるため必ず一度は公証役場に出向く必要があるのですが、定款認証が不要な合同会社の設立の場合、公証役場に出向く必要がなく、株式会社の場合より迅速に会社を設立することが可能になります。

 

また、定款認証には、公証人手数料として5万円、認証定款の謄本取得費として数千円の費用がかかります。

 

定款認証が不要な合同会社の設立の場合は、この公証人手数料等の負担がなく、株式会社の設立より設立時費用を抑えることができます。

 

ただし、定款認証が受けなくてもよいことがデメリットになることもあります。
株式会社の設立の場合、この定款認証手続きにおいて、法的に問題のある定款であれば公証人から指摘してもらうことができますし、定款作成で分からないことがあれば、公証人の助言等を受けることもできます。

 

合同会社の場合は、定款作成に公証人が関与しませんので、設立者の自己責任で定款を作成することになります。

 

2 設立登記の登録免許税が低額である
会社を設立するには、設立しようとする会社の本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請しなければなりませんが、その設立登記申請の際に、登録免許税を納付しなければなりません。

 

株式会社の設立登記の登録免許税は15万円(最低額)であるのに対し、合同会社の設立登記の登録免許税は6万円(最低額)になります。

 

合同会社を設立する場合、株式会社の設立と比べて登録免許税が9万円も安くなり、設立時の費用を抑えることができます。

 

株式会社設立登記の登録免許税
株式会社の設立登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の7(これによって計算した税額が15万円に満たないときは、申請件数一件につき15万円)とされています。

 

合同会社設立登記の登録免許税
株式会社の設立登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の7(これによって計算した税額が6万円に満たないときは、申請件数一件につき6万円)とされています。

 

3 現物出資における検査役調査が不要
不動産、有価証券、機械、車両等の金銭以外の財産を出資の目的とすることを現物出資といいます。
現物出資により株式会社を設立する場合、原則として裁判所が選任した検査役による現物出資財産の調査を受ける必要があるのに対し、合同会社は現物出資により設立する場合であっても検査役の調査は不要です。

 

現物出資の目的である財産の額が500万円を超えなければ、株式会社の設立においても検査役の調査は不要になりますが、現物出資財産の額が500万円を超える場合でより迅速な会社設立を希望するときは、検査役の調査が不要な合同会社の設立を検討してみてもいいでしょう。

 

合同会社の設立が適さない場合

1 多数人が社員になることを想定している会社の場合
株式会社の株主は、持ち株数に応じて議決権を有する(1株1議決権)のに対し合同会社の社員は、出資額に関係なく1人1議決権を原則とします。

 

合同会社が定款変更等の重要な行為を行うには、総社員の同意が必要で有り、社員が1人でも反対すると合同会社は決定することができないことになります。

 

合同会社の場合、社員の数が多くなるとそれだけ会社の意思決定を迅速に行うのが難しくなります。

 

定款で別段の定めをすることもできますが、上述のとおり定款変更に総社員の同意が必要になりますので、社員が多数になることを想定している合同会社の設立は、設立段階において定款を作り込んでおく必要があります。

 

反対に、個人事業主の法人成り等、設立時に社員が1人で設立後も社員を加入させる予定のない会社であれば、設立費用が安価なことも考えれば、合同会社の設立が適しているといえます。

 

2 従業員を役員として経営に参画させたい場合
従業員を役員として経営に参画させたい場合は合同会社の設立はあまり適していません。
株式会社は所有と経営が分離しています。会社の所有者は出資者である株主で有り、経営は株主によって選ばれた取締役が行うことになります。

 

株式会社は優秀な従業員を取締役に選任して会社経営に参画させることができます。取締役は株主(出資者)である必要はありません。

 

合同会社の場合は所有と経営が一致するのを原則とします。合同会社の経営は、出資者である社員が行います。つまり、会社経営に参画させたい場合は、出資して合同会社の社員になる必要があります。
従業員を社員にしたくないが、経営には参画させたいときは、任意の会社内部組織を構築する必要があります。

 

3 出資による資金調達を考えている場合
金融機関からの融資以外に、出資による資金調達を考えている場合、合同会社の設立は適していません。
合同会社でも第三者からの出資を受けることは法律上可能ですが、現実問題として合同会社が第三者から出資を受けことは非常に困難です。
将来的に出資を募り会社を大きくする予定であれば、はじめから株式会社を設立した方がよいでしょう。

 

 

合同会社の設立手続きの流れ

合同会社の設立手続きは株式会社のそれと比べ、簡素化されています。
大まかな流れは、定款作成、出資の履行、設立登記の申請により会社を設立することができます。

 

合同会社の定款作成

社員になろうとする者(1人以上)が定款を作成します。

 

定款とは会社の組織、運営、管理等に関する根本規則のことであり、これらを記載又は記録した書面又は電磁的記録そのもののことをいいます。

 

定款の絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、必ず定款に記載しなければならない事項で、この記載を欠く定款は無効になります。
合同会社の定款の絶対的記載事項は次のとおりです。

目的
商号
本店の所在地
社員の氏名又は名称及び住所
社員全員が有限責任社員である旨
社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準

 

定款の相対的記載事項
定款で定めないと効力を生じない事項のことです。
会社法に定款で別段の定めができるとされている事項は、定款に定めることにより会社法のデフォルトルールとは異なるルールを設けることができます。

 

相対的記載事項(定款による別段の定め)の例
@業務執行社員・代表社員
会社法では、合同会社の社員は、各自が会社の業務執行権を有し、業務執行権を有する社員は各自が会社の代表権を有するとされていますが、定款でこれとは異なる定めをすること認めています。
特定の社員に業務執行権を付与したい場合、特定の業務執行社員に代表権を付与したい場合は、定款で別段の定めをする必要があります。

 

A相続による持分の承継
会社法では、社員が死亡した場合、その持分は相続人に承継されないのを原則としますが、定款で定めることにより死亡した社員の持分をその相続人に承継させることができます。

 

B損益分配の割合
合同会社の利益又は損失は、社員の出資の価額に応じて分配されるのを原則としますが、出資割合と異なる割合で分配したいときは定款に定める必要があります。

 

その他にも持分譲渡の承認、競業取引、利益相反取引の承認等、合同会社が定款で別段の定めができる事項は多岐にわたり、それぞれ会社の実情に応じた定款作成が必要になります。

 

定款認証は不要
合同会社設立時の定款は、公証人の認証は不要です。

 

印紙税の納付
定款を紙で作成したときは、印紙税として4万円の収入印紙を定款に貼付しなければなりません。
なお、電子定款は印紙税は非課税となります。

 

出資の履行

社員となろうとする者は、設立の登記前に出資金の全額を払い込む必要があります。
払い込みの方法は、金融機関に払い込む方法の他に設立時代表社員に支払う方法も認められています。

 

資本金の額の計上
資本金の額は、出資金として払い込まれた額の範囲内で自由に決定することができます。
株式会社のような払込金額の2分の1以上を資本金に計上しなければならないルールはありません。
資本金に計上しなかった額は、準備金に計上されます。

 

合同会社の設立登記の申請

合同会社を設立するには、本店の所在地を管轄する法務局に設立登記を申請する必要があります。
設立登記の申請は、登記申請書及び添付書類を提出して行います。

 

会社の成立日は、登記を申請した日になります。
または、設立登記の申請と同時に代表社員の印鑑登録を行う必要があります。
印鑑登録は、印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)を添付した印鑑届書を法務局に提出することにより行います。

 

添付書類
・定款

 

・業務執行社員の一致を証する書面
⇒業務執行社員の一致により本店の所在場所及び資本金の額を決定します。

 

・代表社員の就任承諾書
定款の定めにより業務執行社員の互選により代表社員を定めたときは、互選書及び代表社員の就任承諾書を添付します。

 

・出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面
⇒代表社員が作成した証明書に、出資金の払込みの記載のある預金通帳のコピーを綴じ合わせたもの等

 

・資本金の額の計上証明書
出資に係る財産が金銭のみの場合は不要です。

 

合同会社設立登記の司法書士報酬

当事務所の合同会社設立の登記手続きの報酬額の目安です。

 

合同会社設立の登記

40,000円(税別)
登録免許税が6万円、その他実費と合わせると、総額10万円円(+実費)ほどのご負担になります。

 

 

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