旧商法に基づき設立された合資会社の取り扱い

旧商法に基づき設立された合資会社(平成18年4月30日以前に設立された合資会社)は、会社法の規定による合資会社として存続するものとされていますが、旧商法と会社法では、社員の業務執行権、社員が死亡した場合の相続人の承継入社等に関して異なる定めがなされています。旧商法の下で設立された合資会社が会社法の下ではどのように取り扱われるのかについて司法書士が解説致します。

 

旧商法に基づき設立された合資会社と会社法に基づき設立された合資会社の違い
会社法は、平成18年5月1日に施行されましたので、平成18年4月30日以前に設立された合資会社は旧商法に基づき設立された合資会社、平成18年5月1日以後に設立された合資会社が会社法に基づき設立された合資会社となります。

 

有限責任社員の業務執行権

会社法の下では、原則、無限責任社員、有限責任社員のいずれの社員も業務執行権を有します。
定款に別段の定めにより特定の社員のみに業務執行権を与えることができます。
有限責任社員に業務執行権を与えない場合は、定款に「有限責任社員は当該会社の業務を執行しない」等の定めを設けることになります。
これに対し、旧商法の下では、業務執行権は、無限責任社員のみが有するものされ、有限責任社員は業務執行権は有しないとされていました。「有限責任社員は会社の業務を執行し又は会社を代表することを得ず(旧商法第156条)」

 

旧商法に基づき設立された合資会社は、会社法の規定による合資会社として存続するとされ、整備法で旧商法の下で設立された合資会社の定款には、「有限責任社員は当該会社の業務を執行しない旨の定め」があるものとみなすものとされましたので、会社法の下では、旧商法に基づき設立された合資会社の有限責任社員は業務執行権を有しないことになります。
旧商法に基づき設立された合資会社の有限責任社員に業務執行権を与えたい場合、整備法により有限責任社員は当該会社の業務を執行しない旨の定めがあるものとみなされた定款の定めを廃止する定款変更を総社員の同意によって行う必要があります。

社員が死亡した場合の承継入社の取り扱い

旧商法に下では、「有限責任社員ガ死亡シタルトキハ其ノ相続人之二代リテ社員ト為ル」(旧商法第161条)と規定し、有限責任社員が死亡した場合は、当然にその相続人が合資会社に承継入社するものとされていました。

 

それに対し、無限責任社員が死亡した場合については旧商法に何ら規定されていませんでしたが、定款に相続人が承継入社できる旨の規定がある場合は、登記先例上、無限責任社員の相続人も承継入社できるものとされていました。(昭和34年1月14日民甲2723号民事局長回答、昭和36年8月14日民甲2016号民事局長回答)

 

会社法の下では、無限責任社員か有限責任社員かを問わず社員が死亡した場合、当該社員は退社し、その相続人が承継入社することはなく、相続人は持分の払い戻し請求権を相続するだけとされました。
ただし、社員が死亡した場合にその相続人が承継入社することができる旨を定款で定めた場合に限り、死亡した社員の相続人が承継入社できるとされました。

 

会社法の施行により旧商法に基づき設立された合資会社の社員が死亡した場合の取り扱いに関して、整備法に経過措置が設けられていないので、旧商法に基づき設立された合資会社といえども、会社法の下では、有限責任社員が死亡した場合、旧商法下のようにその相続人が当然に承継入社する訳ではなく、有限責任社員の相続人が承継入社するためには、相続人が承継入社できる旨の定款の定めを設ける必要があります。

 

旧商法に基づき設立された合資会社の定款に死亡した社員の相続人の承継入社に関する定めがない場合
社員が平成18年4月30日以前に死亡した場合
 無限責任社員が死亡した場合⇒相続人は承継入社しない。
 有限責任社員が死亡した場合⇒相続人は承継入社する。
社員が平成18年5月1日以後に死亡した場合
 無限責任社員が死亡した場合⇒相続人は承継入社しない。
 有限責任社員が死亡した場合⇒相続人は承継入社しない。

 

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