旧商法に基づき設立された合資会社の解散(無限又は有限責任社員のみとなった場合)

会社法下で合資会社の唯一の無限責任社員が死亡した場合

会社法の下では、無限責任社員Aと有限責任社員Bの2名で構成される合資会社において、無限責任社員Aが死亡した場合、Aは退社することになります。

 

定款に死亡した社員の相続人が当該社員の持分を承継することができる旨の定め(相続人による持分承継規定)がなければ、死亡した社員の相続人が持分を承継して社員になることはできません。

 

合資会社から合同会社へのみなし種類変更

定款に相続人による持分承継規定がない合資会社の唯一の無限責任社員が死亡した場合、当該合資会社は有限責任社員のみで構成される会社となります。

 

この場合、会社法では、有限責任社員のみで構成される会社形態である合同会社となる定款変更をしたものとみなされ、合資会社は合同会社に変更されます。(みなし種類変更)
「合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、合同会社となる定款の変更をしたものとみなす。」(会社法第639条第2項)

 

旧商法下で合資会社の唯一の無限責任社員が死亡した場合

旧商法下でも、社員の死亡は退社事由とされていました。
社員が死亡した場合、その相続人が持分を承継して社員となることができるかについてですが、有限責任社員については、その相続人は死亡した有限責任社員に代わって社員となることが明文化されていました。(旧商法第611条第1項)
それに対し無限責任社員については、旧商法では、その相続人が無限責任社員に代わって社員となることができる旨の規定はありませんでしたが、定款で相続人が無限責任社員に代わって社員となることができる旨を定めた場合は、死亡した無限責任社員の相続人がその持分を承継した社員となることができると解されていました。

 

旧商法下の合資会社の解散

よって、定款に相続人による持分承継の定めがなければ、唯一の無限責任社員が死亡した場合、当該合資会社は有限責任社員のみによって構成される会社となります。

 

この場合、会社法では、当該合資会社は合同会社となる定款変更をしたものとみなされましたが、旧商法には、有限責任社員のみで構成される合同会社という形態の持分会社はありませんでしたので、無限責任社員又は有限責任社員の全員が退社した場合(有限責任社員のみ又は無限責任社員のみとなった場合)、無限責任社員及び有限責任社員によって構成される合資会社として存続することができず、当該合資会社は解散することになっていました。(旧商法第162条第1項本文)

 

例えば、旧商法に基づき設立された無限責任社員A及び有限責任社員Bの2名で構成される合資会社において、無限責任社員Aが会社法施行日前である平成18年4月30日以前に死亡した場合、相続人による持分承継に関する定款の定めによりAの相続人が当該合資会社に入社し無限責任社員となるのでなければ、旧商法の規定により当該合資会社は解散することになります。

 

旧商法下の合資会社の清算

旧商法の規定に基づき設立された合資会社は、会社法の規定による合資会社として存続するものとされますので、旧商法の規定に基づき設立された合資会社も会社法の規定が適用されますが、旧商法の規定に基づき解散した合資会社の清算については旧商法を規定を適用するとされています。(整備法第73条)

 

旧商法では、合資会社が解散した場合の清算人について次のように定めています。(旧商法第164条)
@合資会社の清算は、業務執行社員が行う。
A無限責任社員の過半数の一致により清算人を選任したときは、この清算人が清算を行う。

 

合資会社においては、業務執行社員は無限責任社員しかなれず、有限責任社員は業執行社員にはなれなかったので、有限責任社員は清算人になることができません。(上記@は適用できない。)
また、清算人の選任権は、無限責任社員のみが有し、有限責任社員には清算人の選任権がないため、有限責任社員は清算人を選任することもできません。(上記Aも適用できない。)

 

唯一の無限責任社員が死亡したため解散した合資会社については、旧商法第164条では清算人が定まらないことになります。
行政通達によれば、旧商法第164条によって清算人が定まらない場合、旧商法第122条に準じて利害関係人より裁判所に対して清算人の選任を申し立てるべきであるとされています。(昭和29年4月12日民事甲第770号)

 

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