株式会社の本店移転の手続き

株式会社が、営業活動の拠点である本店を移転する場合の手続について説明します。
株式会社が本店を移転するには、取締役会(取締役会非設置会社は、取締役の過半数)において本店移転を決定します。
定款の本店所在地の定め方及び本店移転場所によっては、定款変更が必要な場合があります。

 

株式会社の本店は登記事項ですので、本店を移転したときは、登記手続きも必要になります。

 

 

本店の移転場所及び移転時期の決定

本店の移転場所及び移転時期を業務執行機関により決定します。

 

1 取締役会設置会社の場合
取締役会の決議により決定します。

 

取締役会の決議を本店の機能を移転(引っ越し)する前に行ったときは、実際に本店の機能を移転した日(取締役会で定めた移転日)が本店移転日になります。

 

なお、本店の機能を移転(引っ越し)後に、取締役会の決議があったときは、取締役会の承認決議があった日が本店移転日になります。

 

2 取締役会を置かない会社の場合
取締役の過半数の一致により決定します。

 

取締役会を置かない会社の場合、株主総会の決議によっても、本店の移転場所及び移転時期を決定することができます。

 

本店移転で注意すべきこと

@自宅マンションを本店とすること
自宅マンションを会社の本店(事務所)としようとする場合、マンション管理規約を確認する必要があります。
マンション管理規約には専有部分の用途を、専ら住宅としての使用に制限しており、他の用途に供することを禁止していることがあります。

 

A会社の事業が許認可を要する場合
許認可を要する事業には、自宅を会社の本店としたのでは許認可を受けることができないことがあります。

 

 

定款変更の手続き

株式会社が本店を移転する場合、定款変更が必要になることがあります。

 

1 定款変更が必要なケース
ケース@ 
定款で本店所在地を最小行政区画まで定めており、本店の移転先が定款で定める最小行政区画外である場合

 

例えば、定款で本店所在地を『名古屋市』と定めている会社が、『東京都新宿区』に本店を移転する場合です。
上記の場合、本店所在地を『東京都新宿区』とする定款変更が必要になります。

 

ケースA 
定款で本店所在地を具体的な所在地番まで定めている場合です。

 

定款で『当会社は、本店を名古屋市中区○○一丁目2番地3』定めている会社が、名古屋市中村区○○五丁目6番地に本店を移転する場合等です。

 

定款は当会社は、『本店を名古屋市中区○○五丁目6番地に置く』と変更することも、『当会社は、本店を名古屋市に置く』と変更することもできます。

 

2 定款変更が不要なケース
定款で本店所在地を最小行政区画まで定めており、本店の移転先が定款で定める最小行政区画内である場合
例えば、定款で本店所在地を『名古屋市』と定めている会社が、同じ名古屋市内に本店を移転する場合です。

 

定款で『当会社は、本店を名古屋市中区○○一丁目2番地3』定めている会社が、本店を同一建物内の別の部屋(又は別のフロアー)に移転する場合

 

会社が定款を変更する方法

1 株式会社が定款を変更する方法
株式会社が定款を変更する場合、株主総会を開催して、その特別決議により行います。

 

特別決議の要件
議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもって決する決議です。

 

2 特例有限会社が定款を変更する方法
特例有限会社は会社法上の株式会社に該当しますので、定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要になりますが、通常の株式会社よりその要件が加重されているので注意を要します。

 

特別決議の要件
総株主の半数以上であり、且つ、当該株主の議決権の4分の3以上にあたる多数をもって成立します。

 

 

本店移転の登記手続き

会社の本店は登記すべき事項ですので、本店を移転したときは、管轄法務局において本店移転の登記を申請しなければなりません。

 

本店移転の登記は、本店移転先の法務局(登記所)が、現在の本店所在地を管轄する法務局と同一である場合と、本店移転先の法務局が現在の本店所在地を管轄する法務局と異なる場合とで、その申請手続きが異なります。

 

1 登記申請
@本店移転先の法務局が、現在の本店所在地を管轄する法務局と同一である場合
本店を移転した日から、本店の所在地においては2週間以内に、支店の所在地においては3週間以内に本店の移転登記を申請します。

 

A本店移転先の法務局が、現在の本店所在地を管轄する法務局と異なる場合
本店を移転した日から、旧本店の所在地においては2週間以内に本店の移転登記を、新本店の所在地においては、設立登記の同一事項、取締役の就任の旨及びその年月日、会社の成立年月日、本店を移転した旨及び年月日を登記し、支店の所在地においては3週間以内に本店の移転登記を申請します。

 

新所在地の登記は、旧所在地の登記の申請と同時に、旧所在地の法務局を経由して申請します。
管轄外に本店を移転する場合は、新所在地の法務局において印鑑登録(印鑑届書の提出)が必要になります。

 

会社の本店の所在場所はどこまで登記すべきか
例えば本店を名古屋市○○区○○町一丁目2番3号△△ビル101号室に移転したとき、本店所在場所の登記としては、名古屋市○○区○○町一丁目2番3号△△ビル101号室を本店として登記することも、方書(△△ビル以下)は登記しないこともできます。
△△ビル以下は方書といって集合住宅やビルの建物名、居室番号などのことです

 

本店所在場所の表記にハイフンを用いることの可否
日常において住所を記載する場合、丁目、番地、番、号を省略してハイフンを用いることがありますが、登記では、本店所在場所の表記はハイフンを使用しないのが一般的です。

 

ただし、登記実務では、本店の表記にハイフンを使用していることのみで申請が却下されることはなく、実際に本店の表記にハイフンを用いた会社の登記を見ることがあります。

 

なお、司法書士が設立登記や本店移転登記の依頼を受けたときは、本店の所在場所の表記にハイフンを使用することはありません。

 

2 添付書類
・株主総会議事録
⇒定款変更を決議した総会に係る株主総会議事録(定款変更が必要な場合)
株主総会への議事録の押印は、旧商法の規定に従い、議長及び出席取締役が記名押印している会社が多いと思いますが、会社法では、株主議事録への押印に関して何ら規定していないので、代表取締役の押印だけでも問題ありません。

 

・株主リスト
⇒株主の住所氏名及び持ち株数を記載した書面

 

・取締役会議事録
⇒取締役会設置会社が本店移転する場合、移転場所等を決定した取締役会に係る取締役会議事録を添付します。
会社法では、取締役会議事録を書面で作成したときは、出席取締役及び出席監査役が署名又は記名押印することが求められています。

 

・取締役決定書
⇒取締役会非設置会社が本店移転する場合、移転場所等を決定した取締役決定書を添付します。

 

 

3 登録免許税
(1)管轄法務局の管轄区内に本店を移転する場合
本店所在地において、申請1件につき3万円です。
支店所在地において、申請1件につき9千円です。

 

(2)管轄登記所の管轄区外に本店を移転する場合
本店所在地において、申請1件につき6万円です。
(内訳・旧所在地分3万円、新所在地分3万円)
支店所在地において、申請1件につき9千円です。

 

4 罰則
本店移転の登記の申請を怠ったときは、100万円以下の過料に処せられます。

 

本店移転登記の司法書士報酬

当事務所の本店移転の登記手続きの報酬額の目安です。

 

管轄内本店移転登記

18,000円(税別)
登録免許税が3万円、その他実費と合わせると、総額48,000円(+実費)ほどのご負担になります。

 

管轄外本店移転登記

23,000円(税別)
登録免許税が6万円、その他実費と合わせると、総額83,000円(+実費)ほどのご負担になります。

 

司法書士への依頼をご検討の方へ

司法書士八木事務所では、株式会社の本店移転登記に関するご相談、ご依頼を承っております。
お気軽にお問い合わせください。

 

当事務所の本店移転登記の手数料(報酬)の目安
16,500円〜

 

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