株式会社設立の手続(定款作成〜設立登記)

会社設立定款

株式会社の設立方法は、発起設立と募集設立があります。

発起設立
発起人が設立に際して発行する株式の全部を引受ける設立方法
募集設立
発起人が設立に際して発行する株式の一部を引受け、残りの株式を引受ける者を募集する設立方法

 

募集設立は金融機関の株式払込保管証明書が必要など、設立手続きが煩雑であるため、株式会社の設立はほとんど発起設立の方法がとられています。

 

以下では、発起設立による株式会社の設立手続きについて解説します。

 

発起人による設立手続

発起人とは
発起人は株式会社の設立手続きを遂行する者です。
発起人は設立時発行株式を1株以上引受けなければならず、株式会社成立後の株主になります。
発起人の数は1人いれば足ります。

 

発起人になれる者
自然人(個人)、法人のいずれも発起人になることができます。
また、未成年者、外国人、外国法人も発起人になることができます。

 

発起人になれない者
法人格を有しないいわゆる「権利能力なき社団」は発起人になることができません。
LLP(有限責任事業組合)は登記が組合契約の効力要件とされていることから登記事項証明書を取得することができるが、LLPは法人格を有しないので株式会社の発起人になることはできません。

 

定款の作成

発起人による定款作成

株式会社を設立するには、発起人が定款を作成する必要があります。
定款は代理人により作成することもできます。

 

定款の絶対的記載事項
絶対的記載事項の記載を欠く定款は無効になります。

定款の絶対的記載事項
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所

会社の目的

目的とは、会社の行うべき事業のことであり、会社はその目的の範囲内の行為のみ行うことができます。
なお、当該目的を達成するために必要となる行為も目的の範囲内に含まれるとされます。

 

目的に必要な要件
目的には適法性、営利性、明確性が必要とされています。

 

@適法性
会社の目的は適法なものでなければならず、強行法規や公序良俗に反する行為を行うことを目的とすることはできません。

 

資格を必要とする業務
弁護士業務、司法書士業務、行政書士業務、税理士業務等、有資格者のみが行うことができる業務を会社の目的とすることはできません。

 

農業
農地法で定める一定の要件を満たす株式会社(但し、非公開会社に限ります。)は、農地所有適格法人とし
て、農地の所有及び使用収益が認められていることから、農業を株式会社の目的とすることができます。

 

A営利性
会社は対外的活動により利益を得て、その出資者(株式会社であれば株主)に分配することを目的とする団体ですので、利益を得る可能性が全くない事業を会社の目的にすることはできません。
なお、公益性を有する事業であっても利益を得ることが可能な事業であれば会社の目的とすることができます。
利益を得る可能性のない「政治献金」、「寄附」のみを会社の目的とすることはできないとされています。

 

B明確性
会社の目的は明確でなければならず、一般人が目的として記載されている語句の意味を理解することができるものでなければならないとされています。

 

1 目的が明確であるか否かの基準
「会社の目的に用いられている語句が、一般的な国語辞典等に掲載されているかど否かにより判断する」のが登記実務です。

 

2 ローマ字表記について
社会的に広く認知されているローマ字表記は、会社の目的に使用することができます。
登記通達では、使用が認められるローマ字表記として「OA機器」、「H型鋼材」、「LPガス」「LAN工事」、「NPO活動」が例示されています。
なお、社会に広く認知されているどうか判断することができないときは、ローマ字表記の日本語による説明文を括弧書きにより付記することが認められています。

 

子会社の事業目的(法人が発起人になる場合)
株式会社が発起人になる場合、子会社の目的は発起人である親会社の目的の範囲内であることが必要になります。
実務書によれば「親会社の目的の記載そのものが子会社のそれを形式的に包含する必要もなく、当該目的を達成するために必要又は有益な行為か否かという観点からみて、子会社を保有することが親会社の目的(権利能力)の範囲内にあれば足りるものと考えられる。」とされています。(松井信憲『商業登記ハンドブック(第3版)』17P)

 

会社の商号

商号とは会社の名称のことです。
株式会社の商号には、必ず「株式会社」という文字を用いなければなりません。

 

使用できる文字
漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字

 

使用できる符号
「&」(アンパサンド)
「’」(アポストロフィー)
「,」(コンマ)
「−」(ハイフン)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)
符号は,字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができます。したがって,商号の先頭又は末尾に用いることはできません。ただし,「.」(ピリオド)については,省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます。

 

スペース
ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り,当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。

 

商号調査

既に登記されている他の会社と、同一の商号であり、且つ、本店所在場所も同一である場合、その設立登記の申請は受理されませんので、設立登記を申請する前に、設立しようとする会社と同一商号で同一本店所在場所の会社が既に登記されていないか、調査、確認する必要があります。
商号調査は、インターネットにつながっている自宅のパソコン等で行うことができる登記情報提供サービスの検索機能を利用するのが便利です。
登記情報提供サービスを利用するには、申込(一時利用申込)が必要になります。

 

公証人による定款認証

株式会社の定款は公証人の認証を受ける必要があります。
公証人の認証が必要なのは株式会社設立時に作成する定款(原始定款)で、設立後に定款を変更したり、新しく定款を作成し直す場合は、公証人の認証は不要です。

 

認証を行う公証人
会社の本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人が行います。

 

本店を名古屋市内に置く会社の場合、名古屋法務局所属の公証人(愛知県内の公証役場の公証人)が定款認証を行います。

 

紙定款の作成から認証までの流れ

@定款案の作成

 

A公証役場へ定款案を送付
管轄の公証役場に連絡の上、作成した定款案をFAX、メール等により公証役場に送付し、事前に定款内容を公証人に確認してもらいます。
定款案を送付するときに、併せて「実質的支配者となるべき者の申告書」も送付します。

実質的支配者となるべき者の申告制度
株式会社、一般社団法人、一般財団法人の定款認証の嘱託人は、法人成立の時に実質的支配者となるべき者について、その氏名、住居及び成年月日等と、その者が暴力団員等に該当するか否かを公証人に申告する制度です。

B定款原本の作成
紙による定款は最低3通作成する必要があります。

 

1通は公証役場保管用原本、1通は会社保管用の原本、1通は設立登記申請用の謄本です。
謄本が2通以上必要な場合、必要な分だけ定款を作成する必要があります。(謄本が2通必要なら定款を4通作成する必要があります。)

 

紙による定款には、発起人全員が実印で押印しなければなりません。又、ページの各綴り目に発起人全員が実印で契印します。(定款を袋とじにして表紙と裏表紙の綴り目に契印することもできます。)

 

C認証手続
定款認証日を予約した上で、次の書類を持参して公証役場に出向きます。

 

紙定款の認証に必要な書類
(1)発起人が公証役場に出向く場合
1 発起人が個人の場合
・定款3通
・発起人全員の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)及び実印

 

2 発起人が法人の場合
・定款3通
・法人の登記事項証明書
・法人の印鑑登録証明書及び法人実印

 

(2)代理人が公証役場に出向く場合
1 発起人が個人の場合
・定款3通
・発起人全員の印鑑登録証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
・発起人作成の委任状(実印押印)
・代理人の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)及び実印又は代理人の身分証明書及び認印

 

2 発起人が法人の場合
・定款3通
・発起人の登記事項証明書
・発起人の印鑑登録証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
・発起人作成の委任状(実印押印)
・代理人の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)及び実印又は代理人の身分証明書及び認印

 

認証手数料
紙による定款の認証手数料は次のとおりです。
定款認証手数料 50,000円
謄本費用 約2,000円
収入印紙代(印紙税)40,000円

 

設立時役員の選任

設立時取締役の選任

設立時取締役は株式会社設立後の取締役になります。
設立時取締役は、取締役会を設置しない場合は1名以上、取締役会を設置する場合は3名以上、選任する必要があります。

 

設立時取締役の選任方法
@定款で定める方法
定款に設立時取締役の氏名を記載することができます。
この場合、設立時取締役は、発起人が出資の履行を完了したときに選任したものとみなされます。

 

A発起人により選任する方法
発起人の議決権の過半数により設立時取締役を選任することができます。
発起人は設立の際に引受けた株式1株につき1個の議決権を有します。

 

設立時監査役の選任

設立する株式会社が取締役会設置会社、会計監査人設置会社の場合には、設立監査役を選任しなければなりませんが、そうでなければ設立時監査役は選任する必要はありません。

 

設立時監査役の選任方法
@定款で定める方法
定款に設立時取締役の氏名を記載することができます。
この場合、設立時取締役は、発起人が出資の履行を完了したときに選任したものとみなされます。

 

A発起人により選任する方法
発起人の議決権の過半数により設立時監査役を選任することができます。
発起人は設立の際に引受けた株式1株につき1個の議決権を有します。

 

設立時代表取締役の選定

設立時代表取締役は株式会社成立後の代表取締役になります。

 

設立時代表取締役の選定方法
取締役会設置会社と取締役会非設置会社でその選定方法が異なります。

 

取締役会設置会社の場合
@選定方法を定款で定めたとき
次のいずれかの方法を定款に定め、その選定方法により設立時代表取締役を選定することができます。
・直接定款に設立時代表取締役を定める方法
・発起人の議決権の過半数により選定する方法
・設立時取締役の互選により選定する方法
A選定方法を定款で定めなかったとき
設立時取締役の互選(会社法の規定)

 

取締役会非設置会社の場合
会社法では、取締役会非設置会社の設立時代表取締役の選定方法について定めていませんが、定款に定めることにより、次の方法で設立時代表取締役を選定することができるとされています。
・直接定款に設立時代表取締役を定める方法
・発起人の議決権の過半数により選定する方法
・設立時取締役の互選により選定する方法

 

定款に定めがないときは、発起人の議決権の過半数により選定します。
設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定しない場合、設立時取締役全員が設立時代表取締役になります。(各自代表)

 

発起人による決定事項

発起人全員の同意により次の事項を決定する必要があります。
なお、定款に直接定めることもできます。

・発起人が割当を受ける設立時発行株式の数
・発起人が設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額
・成立後の株式会社の資本金の額及び資本準備金の額

 

資本金の額の決定

成立後の株式会社の資本金の額は、出資金の額の2分の1以上の額を計上しなければなりません。
設立に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付した財産の額が資本金の額になりますが、払込み又は給付した財産の額の2分の1を超えない額は、資本金の額に計上しないことができます。
資本金として計上しなかった額は資本準備金に計上します。

 

本店所在場所の決定

定款で、本店の所在地を最小行政区画まで定めている場合には、発起人の議決権の過半数により本店の所在場所を決定する必要があります。

 

出資金の払込み

発起人は、引受けた株式に係る出資金を会社が定める払込取扱機関に払い込む必要があります。

 

払込取扱機関
発起人は出資金の払込取扱機関を定めなければならず、取扱機関は以下のとおり法令で定められています。

銀行法第2条に規定される銀行
信託業法第2条第2項に規定される信託会社
株式会社商工組合中央金庫
農業協同組合、農業協同組合連合会
漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
信用協同組合、協同組合連合会
信用金庫、信用金庫連合会
労働金庫、労働金庫連合会
農林中央金庫

 

外国銀行について
外国銀行が、日本国から銀行営業の許可を受けて日本国内に設置された支店その他の営業所は、銀行法第2条の銀行とみなされるので、営業許可を受けた日本国内にある外国銀行の支店等は払込取扱機関になります。

 

ネット銀行について
店舗営業を行わず、インターネットバンキングを専業とするネット銀行も銀行法第2条の銀行に該当するので、出資金の払込取扱機関とすることができます。

 

出資金の払込み口座
出資金の保管権限は発起人にあるので、発起人名義の口座に払込むのを原則とします。

 

設立時取締役名義の口座への払込み
発起人から出資金の受領権限が口座名義人である設立時取締役に委任されていれば、当該設立時取締役名義の口座に出資金を払い込むことができます。

 

設立時取締役等の調査

設立時取締役(設立時監査役がいる場合は、設立時取締役及び設立時監査役)は、以下の事項に関して調査しなければなりません。
・出資の履行が完了しているかどうか
・現物出資がある場合、定款で定めた現物出資財産の価額が相当であるかどうか
・設立手続きが法令及び定款に違反していないかどうか

 

設立登記の申請手続き

株式会社は、設立登記の申請により成立します。

 

会社成立日
管轄法務局に設立登記を申請した日(申請が受け付けられた日)が会社成立日になります。
よって、法務局の閉庁日(土日祝日等)を会社成立日にすることはできません。

 

登記期間
株式会社の設立登記は、設立時取締役等による調査が終了した日又は、発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に本店の所在地を管轄する法務局に申請しなければなりません。

 

登録免許税
株式会社の設立登記の申請には、登録免許税を納付しなければなりません。
株式会社設立登記の登録免許税の額
資本金の額の0.7%
但し、上記金額が15万円に満たないときは、15万円
つまり、株式会社の設立登記の登録免許税は最低15万円になります。

 

登録免許税は、登記申請書にその税額相当の収入印紙を貼付して納付するのが一般的ですが、オンライン申請の場合は、電子納付することも可能です。

 

印鑑届出
株式会社設立登記の申請は、会社の代表者(設立時代表取締役)が申請しますが、その申請にあたり、会社の代表者は会社印鑑を管轄法務局に届け出る必要があります。
印鑑の届出は、必要事項を記載した印鑑届出書に会社印鑑を押印したものを提出する事により行います。
印鑑届出書には、印鑑を届け出る会社の代表者が個人の実印を押印し、その印鑑に係る印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のものに限ります。)を添付する必要があります。

 

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