共有物分割の手続(共有不動産の解消)

共有物分割とは、共有不動産の共有関係を解消し、不動産を単独所有するための手続きのことです。
各共有者は、いつでも共有物分割を請求することができます。

 

共有物分割は、共有者全員の協議(話し合い)により行います。
分割協議が成立したときは、共有物分割協議書等を作成し、登記を申請する必要があります。

 

協議ができない場合又は協議がまとまらない場合は、共有者は裁判所に共有物分割を請求することができ、裁判所が分割の方法及び具体的内容を決定します。

 

共有物分割の具体的な方法

1 現物分割
共有不動産をその持分割合に応じて物理的に分割する方法です。
この分割方法の場合、不動産の適正な評価が必要になります。

 

具体例
@一筆の土地の場合
A及びBが共有する土地甲を、土地甲1及び土地甲2に分割(分筆)して、土地甲1はAが、土地甲2はBが単独で所有することにより共有関係を解消する

 

A数筆の土地の場合
A及びBが共有する土地甲及び土地乙を、土地甲はAが、土地乙はBが、単独で所有することにより甲及び乙の共有関係を解消する

 

登記手続
@の場合は、まず土地甲の分筆登記を行い、分筆後の各土地につき、共有物分割を原因とする持分移転登記を申請します。
土地甲1は、B持分全部移転登記により、その持分全部をAに移転し、Aの単独所有とします。
土地甲2は、A持分全部移転登記により、その持分全部をBに移転し、Bの単独所有とします。

 

Aの場合は、土地甲は、B持分全部移転登記により、その持分全部をAに移転し、Aの単独所有とします。
土地乙は、A持分全部移転登記により、その持分全部をBに移転し、Bの単独所有とします

 

2 換価分割
共有不動産を第三者に売却し、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。
この方法は、共有者の全員が当該不動産の所有することを望まない場合に行います。

 

この分割方法は、不動産の評価が不要で、代金を持分割合に応じて分配するので、分割の結果、共有者間で不公平が生じることはありません。

 

登記手続
共有不動産につき、共有者全員から第三者(買主)に対して、『共有者全員持分全部移転登記』を申請します。

 

3 価格賠償
共有者1名の単独所有とすることとし、不動産を単独所有した者が、他の共有者に対してその持分に相当する額の代償金を支払うことにより共有関係を解消する方法です。

 

実質は共有持分の売買です。
この方法で特に問題なるのは、代償金の支払いをどのように確保するかです。
また、不動産を適正に評価しないと分割の結果、共有者間で不公平が生じることがあります。

 

登記手続
共有関係から離脱する共有者から、単独所有する共有者へ『共有者持分全部移転登記』を申請します。

 

共有物分割登記の必要書類

1 現物分割による場合
A及びBが共有する土地甲を、土地甲1及び土地甲2に分割(分筆)して、土地甲1はAが、土地甲2はBが単独で所有することにより共有関係を解消する場合

 

持分移転登記の前提として分筆の登記を申請します。
持分移転登記の申請は、分筆登記が完了した後に行います。

 

甲1の土地(B持分をAに移転する登記)
・Bの登記識別情報又は登記済権利証
・Bの印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
・Aの住民票の写し
・固定資産税評価証明書
・登記原因証明情報(共有物分割協議書等)

 

甲1の土地(A持分をBに移転する登記)
・Aの登記識別情報又は登記済権利証
・Aの印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
・Bの住民票の写し
・固定資産税評価証明書
・登記原因証明情報(共有物分割協議書等)

 

2 換価分割
・共有者全員の登記識別情報又は登記済権利証
・共有者全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
・共有不動産を取得した者の住民票の写し
・固定資産税評価証明書
・登記原因証明情報(売買契約書等)

 

3 換価分割
・共有関係から離脱する共有者の登記識別情報又は登記済証
・共有関係から離脱する共有者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
・共有不動産を単独所有した者の住民票の写し
・固定資産税評価証明書
・登記原因証明情報(共有物分割協議書、売買契約書等)

 

共有物分割の登記費用

1 登録免許税
所有権(持分)移転を申請するには、登録免許税を納付する必要があります。
共有物分割を原因とする持分移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額の2%が原則です。

 

軽減税率
一定の要件を満たした場合には登録免許税率が0.4%になります。

 

軽減税率0.4%が適用される場合の要件
@当該土地につき、共有物分割による所有権移転登記の申請前に分筆の登記がされていること
A当該登記の申請が、当該分筆登記によって生じた他の土地の全部又は一部についての共有物分割による持分移転登記の申請と同時申請がなされること

 

上記@及びAの要件を満たす場合、当該分筆前に有していた持分に応じた土地の価額に対応する部分に限り、共有物分割による持分移転登記の登録免許税率が0.4%になります。

 

2 司法書士報酬
登記手続きを司法書士に依頼すると、司法書士に手数料(報酬)を支払う必要があります。

 

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共有物分割を行ったときの税金

共有不動産分割の実質は、共有持分の交換又は売買にあたり、譲渡所得税、不動産取得税が課税されるのを原則としますが、現物分割に関しては非課税の特例があり課税関係が複雑になっています。
共有物分割の際には、これらの課税関係を意識した分割が必要となります。

 

1 譲渡所得税
@現物分割の場合
共有不動産を現物分割した場合、実質共有者間で持分を交換したことになるので、譲渡所得税が課税されるのを原則としますが、次の要件を満たす場合には、譲渡はなかったものとみなされ非課税扱いになります。

 

所得税法基本通達(33-1-6)

個人が他の者と土地を共有している場合において、その共有に係る一の土地についてその持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱う。(昭56直資3-2、直所3-3追加)

また、基本通達33-1-6の注2で「分割されたそれぞれの土地の面積の比と共有持分の割合とが異なる場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当するのであるから留意する。」とされています。

 

なお、効用を一にしない複数の不動産にまたがって現物分割する場合には、所得税法基本通達33-1-6は適用されないと解されており、固定資産の交換特例が適用されなければ、譲渡所得税が課税されることに注意を要します。

 

固定資産の交換特例
共有不動産の現物分割は、実質交換にあたりますので、一定の要件を満たせば、固定資産の交換特例が適用され譲渡所得税に関して譲渡はなかったものと取り扱われます。

固定資産の交換特例の適用要件
@交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。

 

A交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。(借地権は土地の種類に含まれます。)

 

B交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。

 

C交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。

 

D交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
 この用途については、次のように区分されます。
 土地の場合 宅地、田畑、山林、鉱泉地、池又は沼、牧場又は原野、その他に区分されています。
 建物の場合 居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用に区分されています。

 

E交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

この特例は、交換する固定資産が等価でなくても、その差額がいずれか高い方の20%の相当する金額を超えなければ特例適用の対象になりますが、この差額を調整するために金銭(差額調整金)が相手方に支払われた場合は、この金銭を受け取った側に、差額調整金に対して譲渡所得税が課税されます。

 

A換価分割・価格賠償の場合
換価分割又は価格賠償により共有不動産を分割した場合には、通常の売買の同様に資産の譲渡にあたり、譲渡所得税が課税されます。

 

2 不動産取得税
共有物分割による不動産の取得は原則、不動産取得税は課税されません。
ただし、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得については、不動産取得税が課税されます。(地方税法73条の7 2の3号)

 

@現物分割の場合
原則、不動産取得税は課税されません。(非課税)
ただし、分割前の持分比率とは異なる割合で分割取得した場合には、不動産取得税が課税されることがあります。

 

A換価分割・価格賠償の場合
原則、不動産取得税が課税されます。

 

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