不動産贈与の合意解除による登記の抹消

不動産を贈与し、その所有権移転登記も済ませたが、後日多額の贈与税が課税されることが判明したため、贈与を取りやめ、不動産の登記名義を元に戻したい場合があります。

 

不動産贈与の契約当事者が合意すれば贈与契約を無かったことにすることができます。
このように当事者間の合意により契約をなかったことにすることを合意解除と言います。

 

贈与契約を合意解除すると、贈与により受贈者(贈与を受けた者)に移転した不動産の所有権は、贈与者(贈与した者)に戻ることになります。

 

既に受贈者に所有権移転登記を済ませている場合は、登記名義も贈与者に戻す必要があります。
登記名義を元に戻すには、所有権抹消登記を申請する必要があります。

 

このように、民法上は、合意解除により不動産贈与はなかったものとされますが、税法上は異なった取扱いがなされます。

 

贈与契約に基づいて登記名義を変更をした以上、後日当該契約を解除したとしても贈与がなされたものとして贈与税が課税されるのが原則ですが、一定の要件を満たすと贈与契約を合意解除したとしても、贈与税が課税されないことがあります。

 

 

不動産贈与契約を合意解除したときの贈与登記の抹消手続

 

不動産贈与契約を合意解除した場合、既に贈与による所有権移転登記を済ませているときは、登記名義を元に戻す必要があります。

 

一旦行われた登記名義を元に戻すには、所有権抹消登記を申請する必要があります。

 

所有権抹消登記は、現所有権登記名義人(受贈者)と元所有権登記名義人(贈与者)が共同して管轄の法務局に申請します。

 

登記必要書類
・登記識別情報(又は登記済権利証)
⇒現所有権登記名義人が贈与による所有権移転登記を受けたときに交付されたもの

 

・現所有権登記名義人の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)

 

・登記原因証明情報(合意解除したことを証する書面)

 

登録免許税
所有権抹消登記の登録免許税の額は、申請にかかる不動産の個数×1,000円になります。
なお、所有権抹消登記を申請したとしても、所有権移転登記申請時の納付した登録免許税の返還を受けることはできません。

 

所有権抹消登記が申請できないケース
登記上の利害関係を有する第三者がいる場合は、所有権抹消登記の申請には、当該利害関係人の承諾書の添付が必要になります。

 

例えば、贈与による所有権移転登記完了後に、受贈者が贈与された不動産に債権者のために抵当権を設定しその登記も済ませた場合、この抵当権権者が所有権抹消登記の登記上の利害関係人に該当します。

 

このケースで所有権移転登記を抹消するには、抵当権者の承諾書が必要になります。
抵当権者が所有権抹消登記を申請することを承諾してくれなければ、所有権抹消登記の申請はできません。

 

この場合は、真正な登記名義の回復等を原因として受贈者から贈与者への所有権移転登記を申請することにより登記名義を元に戻す(贈与者に戻す)ことができます。

 

なお、所有権移転登記を申請することにより登記名義を戻す場合は、登録免許税の額が、固定資産税評価額の2%相当になりますので、所有権抹消登記と比べるとかなり高額になってしまいます。

 

贈与した不動産が固定資産税評価額1,000万円の土地1筆と固定資産税評価額1,000万円の建物1個の場合の登録免許税の額

 

・所有権抹消登記の場合
2,000円(不動産の個数2個×1,000円)

 

・所有権移転登記の場合
40万円(固定資産税評価額合計2,000万円×2%)

・既になされた登記名義を元に戻すには所有権抹消登記の申請が必要
・抹消登記につき利害関係人がいると所有権抹消登記の申請には利害関係人の承諾が必要
・利害関係人が承諾しないときは、所有権移転登記により登記名義を戻すことを検討

 

 

不動産贈与契約を合意解除した場合の贈与税の取扱い

不動産贈与契約を合意解除したとき、贈与税の課税はどうなるのでしょうか。
原則的には、合意解除しても贈与税は課税されます。ただし、一定の要件を満たした場合、例外的に贈与税を課税しないことにしています。

 

原則⇒課税
合意解除により贈与契約の取消し、又は解除があったとしても、当該贈与契約に係る財産について贈与税の課税をおこなう。
(名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて通達11)

 

特例⇒非課税
贈与契約が合意により取り消され、又は解除された場合においても、原則として、当該贈与契約に係る財産の価額は、贈与税の課税価格に算入するのであるが、当事者の合意解除による取消し又は解除が次に掲げる事由のいずれにも該当しているときは、税務署長において当該贈与契約に係る財産の価額を贈与税の課税価格に算入することが著しく負担の公平を害する結果となると認める場合に限り、当該贈与はなかったものとして取り扱うことができるものとする。

非課税となる要件
@贈与契約の取消し又は解除が当該贈与のあった日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限までに行われたものであり、かつ、その取消し又は解除されたことが当該贈与に係る財産の名義を変更したこと等により確認できること。

 

A贈与契約に係る財産が、受贈者によって処分され、若しくは担保物件その他の財産権の目的とされ、又は受贈者の租税その他の債務に関して差押えその他の処分の目的とされていないこと。

 

B当該贈与契約に係る財産について贈与者又は受贈者が譲渡所得又は非課税貯蓄等に関する所得税その他の租税の申告又は届出をしていないこと。

 

C当該贈与契約に係る財産の受贈者が当該財産の果実を収受していないこと、又は収受している場合には、その果実を贈与者に引き渡していること。
(名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについての通達の運用4)

 

・不動産贈与契約を合意解除したとしても原則贈与税の申告が必要
・例外的に、申告期限前に合意解除し、登記名義を元に戻す等の一定の要件を満たすときは、贈与はなかったものとして贈与税は課税されない。

 

具体的な場合において贈与税の課税されるかどうかは、税務署又は税理士に確認しましょう。

 

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