解散した法人を抵当権者とする休眠担保権を不動産所有者が単独で抹消することができる新制度が創設されました。(新制度は、令和5年4月から開始、それ以前に設定された抵当権についても新制度の対象になります。)
休眠担保権とは、被担保債権の弁済等により、実体上既に消滅しているが、その登記が抹消されることなく長年放置されている抵当権等の担保権に関する登記のことをいいます。
以下、解散法人の休眠担保権の抹消手続きを簡略化する新制度について、司法書士が解説致します。
法人を抵当権者とする休眠抵当権を抹消する方法の一つとして不動産登記法第70条3項後段で定める供託特例の制度があります。
これは、抵当権者の所在が不明で、抵当権者と共同して当該抵当権抹消登記を申請することができない場合、被担保債権の弁済期から20年が経過していれば、当該被担保債権(元本)、利息、損害金の全額を供託することにより、不動産所有者が単独で当該抵当権を抹消することができる制度ですが、抵当権者が法人の場合、事実上利用ができない制度と言われています。
それは、この手続きを利用するには、抵当権者の所在不明が要件の一つになるのですが、法人が抵当権者の場合、所在不明とは、「商業・法人登記簿に当該法人の記録がなく、かつ、閉鎖登記簿も廃棄されており、閉鎖登記簿謄本を取得することができない場合」とされています。
閉鎖登記簿は閉鎖から20年間経過すれば廃棄してもよいことになっているのですが、登記簿を管理する法務局では、保存期間経過後も廃棄することなく閉鎖登記簿を保管していることが多く、法人の閉鎖登記簿謄本を請求するとかなりの確率で取得することができてしまい、抵当権者の所在不明の要件を満たすことができず、法人が抵当権者の場合、供託特例が利用できるのはかなり限定的になってしまっているのが実情です。
このように、現行の休眠担保権の抹消手続きの制度は、法人が抵当権者の場合、非常に利用しづらい制度になっていたところ、法人を抵当権者とする休眠担保権を簡易に抹消するための手続きが新設され、令和5年4月から施行されることになりました。
次の要件を満たす場合、登記権利者(所有権登記名義人)は、法人を登記名義人とする抵当権の登記を単独で抹消申請することが可能になります。
要件
@抵当権者が解散法人であること
A所在調査を行っても当該法人の清算人の所在が判明しないため、共同して抹消登記を申請できないこと
B被担保債権の弁済期から30年が経過していること
C当該法人の解散の日から30年が経過していること
清算人の所在調査の方法
・商業法人登記簿上の清算人の住所について、住民登録の有無を確認する。
・その住所を本籍地とする戸籍、戸籍の附票の有無を確認する。
・その住所に宛てた郵便物の到達の有無を確認する。
上記の方法を試みたものの清算人の所在が判明しない場合、上記要件を満たすことになります。
弁済期の確認方法
被担保債権の弁済期については、昭和39年の法改正までは、その定めがあるときは、抵当権設定登記の登記事項でしたが、現在では弁済期は登記事項ではないので、現在の登記記録を確認しても判明しません。
被担保債権の弁済期を確認するには、不動産の閉鎖登記簿謄本を取得する必要があります。
現行制度による法人を抵当権者とする休眠担保権の抹消手続きの流れは以下のとおりです。
@法人の閉鎖登記簿謄本を請求
当該法人の本店(又は主たる事務所)所在地を管轄する法務局に請求します。
この段階で法人の閉鎖登記簿謄本が取得することができると、前述した供託特例(不動産登記法第70条3項後段)の制度が利用できません。
A清算人の所在調査
清算人の登記上の住所を住所地とする住民票の請求、登記上の住所を本籍地とする戸籍謄本等の請求、登記上の住所宛に郵便物を送付する方法により所在調査を行います。
所在調査で清算人の所在が判明したときは、その清算人と共同して抵当権抹消登記を申請します。
B清算人選任の申立て
調査の結果、清算人の死亡が判明した場合、又は所在が判明しなかった場合、法人の本店所在地を管轄する地方裁判所に清算人選任の申立てを行います。
C休眠担保権の抹消登記の申請
裁判所によって選任された清算人と不動産所有者が共同して当該休眠担保権の抹消登記を申請します。
現行制度では、清算人の所在調査によって清算人の死亡が判明した場合、又は所在が判明しなかった場合、「清算人となるべき者がいないとき」として、裁判所に清算人を選任してもらう必要があります。
この清算人選任は、利害関係人として不動産所有者が申立てることになるのですが、通常予納金の納付が求められ、これが申立人にとって大きな経済的負担になっています。(予納金の額は10万円前後が多いです。)
新制度では、清算人の所在調査の結果、清算人の死亡が判明した場合、又は所在が判明しなかった場合、被担保債権の弁済期から30年が経過しており、かつ法人の解散から30年が経過していれば、清算人を選任することなく、不動産所有者が単独で当該休眠担保権を抹消することができ、現行制度より簡易迅速に抹消登記を申請することができるようになりました。
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