古い抵当権(休眠担保権)の抹消登記

休眠担保権とは
休眠担保権とは、長期間にわたり権利行使されることなく放置されたままの担保権(主に抵当権)のことを言います。
不動産を相続したときに登記簿謄本を見て古い抵当権が設定されていることに気づいたりします。

 

明治、大正期に設定された抵当権で、100年以上放置されたままの抵当権の登記もよく見かけることがあります。

 

古い抵当権の抹消登記の方法

抵当権を抹消するには、登記権利者(所有権者)と登記義務者(抵当権者)が共同して登記申請を行うのを原則とします。(共同申請の原則)

 

抵当権の登記を抹消するには、被担保債権が弁済、時効等により消滅していることが前提になります。

 

抵当権を抹消するには、抵当権者を探し出して、抵当権抹消登記に協力してもらうことになります。
抵当権者の調査方法としては、登記簿上の住所をもとに戸籍謄本、戸籍の附票等を請求することになります。

 

ただし、かなりの昔に設定された抵当権の場合ですと、抵当権者がすでに死亡しており相続が開始していることがります。この場合、抵当権抹消登記の手続きは、抵当権者の相続人全員に協力してもらう必要があり、抵当権者が死亡している場合は、その相続人全員の行方を調査する必要があります。

 

登記簿上の住所をもとに戸籍等を請求したが戸籍が取れなかったときは、休眠担保権抹消登記の特例を使えるかどうかを検討します。

 

抵当権抹消登記の単独申請の特例

抵当権抹消登記の単独申請の特例として次の3種類の方法があります。

 

除権決定による方法
債権証書等の提供による方法
弁済供託による方法

 

1 除権決定による単独申請

登記義務者(抵当権者)が所在が知れないため、共同申請ができない場合は、登記権利者(所有者)は裁判所に公示催告の申し立てをし除権決定を得たうえで、単独で当該登記の抹消を申請できる制度です。

 

この制度は公示催告の申立を受けた裁判所が抵当権者に対して「抵当権が消滅していなければ権利の申し出をしてくださいよ」と権利が消滅していないことの申出を促します。

 

一定の期間内に抵当権者の申し出がなかった場合に、裁判所が当該抵当権の失権を内容とする除権決定を行います。

 

裁判所の除権決定書を添付することにより、不動産の所有者が単独で抵当権抹消登記の申請が可能になります。

 

ただし、公示催告の申し立てをするためには抵当権者の所在不明および抵当権の消滅を裁判所に証明する必要があります。

 

これはあらゆる調査を尽くしたが所在が判明しなかった場合でなければ所在不明とは認めてもらえず、抵当権の消滅を証明するためには、弁済証書(領収書)など証拠書類が必要となります。

 

先代、先々代が設定したような抵当権の場合、現在の所有者が権利関係を把握していることは稀であり、弁済していたとしても、弁済証書(領収書)等の書類を保管してることは通常期待することはできないので、この除権決定による方法を利用するのはかなり厳しいのではないでしょうか

 

2 債権証書等の提供による単独申請

登記義務者が行方不明のため、共同申請ができない場合は、登記権利者は抵当権の被担保債権の消滅したことを証する情報(債権証書、弁済証書など)を提供することによって、単独で抵当権抹消登記を申請できる制度です。

 

この制度は、現在の所有者が権利関係を把握しており、被担保債務を弁済した事実があり、且つ弁済証書等の書類を保管してるときは利用することができますが、全く権利関係を把握していない、弁済した事実はあるが弁済証書等の証拠書類を保持していないときは利用できません。

 

3 弁済供託による休眠担保権の抹消登記の単独申請

弁済供託による休眠担保権の抹消登記の単独申請とは
@登記義務者が行方不明のため、A抵当権等の担保権の抹消登記を共同して申請ができない場合は、B被担保債権の弁済期から20年が経過し、且つC20年経過後に被担保債権の元本、利息、損害金の全額の金銭を供託することによって、登記権利者が単独で抵当権抹消登記を申請できる制度です。

 

次に、弁済供託による休眠担保権抹消登記の単独申請の要件を確認します。

 

弁済供託による休眠担保権抹消の要件
@登記義務者(抵当権者)が所在が知れないこと
(1)抵当権者が個人の場合
「所在が知れない」とは、抵当権者の住所や居所を知らなくても、勤務先に勤務していることなどを知っている場合には、「所在が知れない」には該当しないとされています。

 

また、「所在が知れない」といえるためには、住民票や戸籍簿の調査、官公署や近隣住民からの聞き込みなど、相当の手段を尽くしてもなお、不明である場合とされています。

 

(2)抵当権者が法人の場合〜
法人の「所在が知れない」といえるためには、法人登記簿が閉鎖されており、且つ廃棄されている場合です。

 

登記申請の添付書類として「所在が知れないことを証する書面」が必要となりますが、その前提としての所在不明調査は、前記、除権決定を得るための所在不明調査ほど厳格な調査は要求されていないので、所在が不明であることは比較的容易に証明すること可能です。

 

所在が知れないことを証する書面
・市町村長の証明書
(抵当権者が登記簿上の住所に居住していないことの証明)
※ただし、市町村は登記簿上の住所に住民票がないことを証明してくれても、現に居住していないことまでは証明してくれないといわれています。

 

・警察官または民生委員の証明書
(抵当権者が登記簿上の住所に居住していないこと証明)

 

・被担保債権の受領催告書が不到達であったことを証する書面
⇒受領催告書は、抵当権者の登記簿上の住所に宛てて、配達証明付郵便で送付します。

 

・法人調査書(印鑑証明書付)
(管轄法務局で法人登記簿および閉鎖登記簿の取得ができなかったことを内容とするもの)

 

上記書面のうち、いずれかひとつが必要となります。

 

A抹消すべき登記が、先取特権、質権又は抵当権であること
・抵当権は元本確定後の根抵当権も含みます。
・担保権でも譲渡担保、仮登記担保権は対象とはなりません。

 

B被担保債権の弁済期から20年が経過していること
弁済期の証明することが必要となりますが、抵当権の登記が昭和39年法改正以前にされている場合は、弁済期が登記事項であったので、登記記録によって弁済期を証明することができますが、昭和39年法改正以後に設定された抵当権の登記の場合、弁済期が登記事項でないので、登記記録によっては弁済期を証明することができないので「被担保債権の弁済期を証する書面」が必要となります。

 

C20年経過後に被担保債権の元本、利息、損害金の全額に相当する金銭が供託されたこと
債権の全額又は一部を既に弁済していたとしても、この制度を利用するには元本と供託時までの利息、損害金の全額を供託しなければなりませんが、かなり古い時代に設定された抵当権は債権額が少額(現在の貨幣価値に換算するのではない。)なことが多いので経済的負担はそれほど大きくはないのではないでしょうか。

 

以上、4つの要件をすべて満たすと 単独で抵当権の抹消登記を申請することができます。

 

弁済供託による抵当権抹消登記の手続き

所有権者が単独で申請することができます。
抵当権抹消登記は、不動産の所在地の法務局に抵当権抹消登記を申請します。

 

登記原因及び原因日付
登記原因は弁済であり、原因日付は供託所が供託金を受け入れた日になります。

 

添付書類
・供託書正本

 

・弁済期を証する書面
⇒弁済期の記載のある閉鎖登記簿謄本等

 

・抵当権者の所在が不明であることを証する書面
⇒「宛所に尋ねありません」等により返戻された配達証明付郵便で送付した受領催告書等

 

登録免許税
不動産1個につき、1,000円です。

 

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