太陽光発電設備のための地上権設定登記

太陽光発電設備の用地として地上権が利用される理由
旧民法(平成29年改正前)では、民法上の賃貸借契約の存続期間(契約期間)の上限は、20年間と定められており、契約期間20年を超える賃貸借契約を締結することはできませんでした。

 

太陽光発電設備の用地の場合、FIT期間(固定価格買取期間)20年に、設備の設置、撤去期間をも考慮すると、その契約期間は、20年を超えてしまうことがあり、賃貸借契約を利用しようとすると、複数の賃貸借契約が必要であり、一度の契約で済ますことができないといったデメリットがありました。(太陽光発電設備は、借地借家法上の事業用建物に該当しないので、契約期間を20年超30年未満とすることが可能な事業用定期借地権を設定することもできません。)
そのため、存続期間の上限がない地上権をあえて利用する場合があるとされてきました。

 

新民法により賃貸借の存続期間の上限が50年に
新民法(平成29年法律第44号(令和2年4月1日施行))により、民法上の賃貸借の存続期間の上限が、20年から50年に変更されたため、契約期間20年を超える賃貸借契約が可能になりますので、今後は、太陽光発電設備用地として地上権を設定することは少なくなるのではないでしょうか。

 

以下では、太陽光発電設備用地として利用されることがある地上権とはどのような権利なのか解説します。

地上権と地上権登記

地上権とは、「工作物又は竹木を所有するために他人の土地を使用することができる権利」です。(民法265条)

 

地上権は、土地所有者と地上権を取得する者との間の契約により設定されます。(地上権設定契約)

 

地上権が設定された場合、土地所有者は地上権設定登記の申請に協力する義務を当然に負います。
(賃貸借契約であれば、不動産賃借権が設定されても、賃貸人は当然には登記義務を負わず、賃借権設定登記を行うためには、別途登記申請に関する特約が必要となります。)

 

地上権設定の目的が建物所有であれば、地上権は借地権として、借地借家法の適用を受けることになります。

 

地上権は登記することにより、土地所有者(設定者)及びその包括承継人(相続人等のこと)以外の第三者に対しても地上権を主張することができます。(土地が譲渡され、その所有者に変更が生じたとしても、地上権の登記をしておけば、新所有者に対しても引き続き地上権を主張することができる。)

 

【権利部乙区】(地上権の登記)

順位番号 登 記 の 目 的 受付年月日・受付番号 権 利 者 そ の 他 の 事 項
1 地上権設定

平成25年○月○日
第○○○○号

原因 平成25年○月○日設定
目的 太陽発電設備所有
存続期間 21年
地代 1平方メートル1月金○○円
支払時期 毎月末日までに翌月分
地上権者 ○○市○○町○丁目○番地
 甲 野 太 郎

 

 

地上権は土地所有者の承諾がなくても譲渡又は転貸が可能です。(賃借権を譲渡、転貸するには賃貸人の承諾が必要)
よって、土地所有者の承諾がなくても、地上権者は地上権付き太陽光発電設備を売却することができます。
この場合、地上権の移転登記を行うことにより、新地上権者は地上権の移転を主張することができます。

 

【権利部乙区】(地上権移転の登記)

順位番号 登 記 の 目 的 受付年月日・受付番号 権 利 者 そ の 他 の 事 項

1

 

 

 

 

 

 

 

付記1号

地上権設定

平成25年○月○日
第○○○○号

原因 平成25年○月○日設定
目的 太陽発電設備
存続期間 21年
地代 1平方メートル1月金○○円
支払時期 毎月末日までに翌月分
地上権者 ○○市○○町○丁目○番地
 甲 野 太 郎

1番地上権移転

令和2年○月○日
第○○○○号

原因 令和2年○月○日売買
地上権者 ○○市○○町○丁目○番地
 乙 野 次 郎

 

地上権は抵当権を設定することができます。(賃借権には抵当権を設定することができない。)

 

但し、地上権を目的とする工場抵当権の設定登記を申請することができないとされています。(登記研究242号)
地上権の目的の土地上に、太陽光発電設備を設置し、当該地上権に抵当権を設定したとしても、工場抵当法の規定は適用されず、当該太陽光発電設備には抵当権の効力が及ばないとされています。

工場抵当
工場に設定した抵当権の効力は、工場に付加して一体となった物、工場に備え付けた機械器具等にも及びます。
工場抵当法の工場とは、「営業のため、物品の製造、加工、印刷、撮影の目的に使用する場所」のことを言い、「営業のため、電気の供給又は電気通信サービスの提供の目的に使用する場所」も工場とみなされます。

地上権に抵当権を設定しても、土地に設置した太陽光発電設備にはその効力が及ばないため、太陽光発電設備をも担保に供したい場合は、別途、譲渡担保契約、動産譲渡登記等を利用する必要があります。

 

【権利部乙区】(地上権を目的とする抵当権設定登記)

順位番号 登 記 の 目 的 受付年月日・受付番号 権 利 者 そ の 他 の 事 項

1

 

 

 

 

 

 

 

付記1号

地上権設定

平成25年○月○日
第○○○○号

原因 平成25年○月○日設定
目的 太陽発電設備
存続期間 21年
地代 1平方メートル1月金○○円
支払時期 毎月末日までに翌月分
地上権者 ○○市○○町○丁目○番地
 甲 野 太 郎

1番地上権抵当権設定

平成25年○月○日
第○○○○号

原因 平成25年○月○日金銭消費貸借同日設定
債権額 金○○○○円
利息 年○%
損害金 年○%
債務者 ○○市○○町○丁目○番地
 甲 野 太 郎
権利者 ○○市○○町○丁目○番地
 株式会社乙銀行

 

 

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