
破産手続の終結又は廃止により登記記録が閉鎖された会社に、当該会社名義の不動産等の残余財産が発見された場合に、当該財産を処分するためにはどうすればよいか?
結論
清算人就任の登記を申請し、閉鎖された登記記録を復活させます。
新たに就任した清算人が会社を代表して発見された不動産を売却します。
破産手続開始の決定がなされると会社は解散します。(会社法471条5号)
破産手続開始の決定がなされた会社は、破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が終了するまで存続するものとみなされます。
破産者(破産会社)が破産手続開始の時において有する一切の財産は破産財団とされ、破産財団に属する財産の管理処分する権限は、裁判所が選任した破産管財人に専属し、会社の清算事務は、この破産管財人が遂行することになるため、破産手続開始決定により解散した会社は清算人を選任する必要はありません。
破産手続終結の決定があったとき又は破産手続廃止の決定が確定したときは、裁判所はその旨の登記を法務局(登記所)に嘱託します。
裁判所の嘱託により破産手続終結の登記又は破産手続廃止の決定確定の登記をしたときは、当該会社の登記記録を閉鎖することになります。
破産手続終結の決定により残余財産が存在せず、清算事務の必要がない場合は、破産手続終結決定の確定により法人格が喪失し、破産会社は消滅するとされています。
ただし、破産手続は、破産債権者に対する公平な配当を目的とするものであり、破産手続終結の決定により当然に会社が消滅するものではないとされています。
つまり、破産手続終結の決定により会社の登記記録が閉鎖されたとしても、破産会社に残余財産が存在する場合は、破産会社は消滅せず、清算の目的の範囲内において会社はなお存続するものとみなされます。
破産手続終結の決定後に残余財産が発見された場合、当該会社は清算会社として清算事務を行う必要があります。
この場合、清算事務を遂行するのは、すなわち残余財産の処分管理権は誰に属するのでしょうか?
破産手続終結後も、破産会社を根抵当権者とする根抵当権設定登記が抹消されずに残っていた不動産に関して、不動産所有者が当該破産会社の元破産管財人を相手として根抵当権設定登記抹消登記請求訴訟を提起した事案で、最高裁判所は、「破産手続が終結した場合には、当該財産を追加配当とすることを予定していたなどの特段の事情がない限り、原則として破産者の財産に対する破産管財人の管理処分権は消滅し、以後、破産者が管理処分権が復活する」と判示しました。(平成5年6月25日)
破産手続終結の決定後に残余財産が発見された場合、破産会社の清算事務を行うのは原則、(元)破産管財人ではなく清算人ということになります。
以上は、破産手続廃止決定の場合も妥当するものと解されます。
会社の清算人は、次のとおり決定します。(会社法第478条)
定款又は株主総会の決議により清算人を定めたときは、その者が清算人となります。
定款及び株主総会の決議により清算人を定めなかったときは、解散当時の取締役が清算人になります。
これらにより清算人となる者がいないときは、利害関係人の申し立てにより裁判所が清算人を選任します。
破産手続終結後に清算事務を遂行するために清算人が必要な場合、会社法の原則に従えば解散時(破産手続開始の決定時)の取締役が清算人に就任することになりますが、破産手続廃止の決定に関する事案で、最高裁判所は、「会社と取締役との間の関係は、委任に関する規定に従うべきであり、民法第653条によれば、委任は委任者又は受任者の破産によって終了するものであるから、取締役は会社の破産により当然に取締役の地位を失うとして、従前の取締役が当然に清算人となるものではなく、商法第417条第1項ただし書の場合を除き、同条第2項により利害関係人の請求によって裁判所が選任すべきである」旨を判示しました。
上記判例は、破産手続終結の場合も妥当するものと解されます。
破産手続終結の決定後に残余財産が発見された場合、破産会社の清算事務を行う場合、定款又は株主総会の決議により清算人を定め、これらにより清算人を定めることができないときは、利害関係人が裁判所に清算人の申し立てを行うことになります。
定款に清算人を定めていることは稀であると思われますので、株主総会を開催することができるのであれば株主総会を開催して清算人を選任します。
株主総会を開催できない場合は、利害関係人(株主等)が会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に清算人選任の申し立てを行います。
会社の本店所在地を管轄する法務局に清算人就任の登記を申請します。
同時に清算人の印鑑届を行います。
清算人就任の登記を申請すると、職権で破産手続終結決定(又は破産手続廃止決定確定)による閉鎖登記が抹消され、登記記録に関する事項欄に「年月日復活」の登記がなされます。
清算人が会社を代表して残余財産の売却等の処分を行います。
清算事務終了後の手続き(清算結了の登記)
通常、清算事務が終了したときは、清算人は決算報告書を作成し、株主総会の承認を受け、清算結了の登記を申請することになります。
株式会社の清算の場合、2ヶ月間の債権申出の期間を設けなければならない関係上、清算人就任から2ヶ月間は、清算結了の登記を申請することができないとされていますが、破産手続終結がなされた会社の場合も妥当するのでしょうか?
破産手続において破産公告および知れている破産債権者への通知がなされているので、2ヶ月間の債権申出期間の経過を待たずして清算結了の登記の申請ができないものか、実際当職が受任した登記事件で、ある法務局に照会したところ、通常通り清算人就任の登記から2か月を経過しない清算結了の登記の申請は受理できない旨の回答を得たことがあります。理由はそのような例外はどこにも書かれていないようなことを言っていました。
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