会社と取締役との不動産売買(利益相反行為)

会社とその取締役との間で取引を行うには、会社法の定めにより株主総会の決議によりその承認を受けなければならないとされています。取締役会を置く会社(取締役会設置会社)の場合は、取締役会の決議によりその承認を受けなければならないとされています。

 

会社所有の不動産を取締役に売却すること、取締役が所有する不動産を会社に売却することは、いずれも利益相反行為とされ、株主総会(又は取締役会)の承認の得る必要があります。

 

会社と取締役の利益が衝突する可能性がある取引(利益相反取引)を行うには株主総会(又は取締役会)の承認が必要

 

また、所有権移転登記申請の際、承認決議に係る株主総会議事録(又は取締役会議事録)を添付する必要がありますので、議事録の作成が必要になります。

 

株主総会議事録(又は取締役会議事録)が所有権移転登記の添付書類になる。

 

 

取締役会非設置会社と取締役の不動産売買の場合

1 株主総会の承認決議
取締役会非設置会社とその取締役との間で、不動産売買を行うときは、株主総会の承認が必要になります。

 

2 株主全員による書面決議
取締役又は株主が会社・取締役間の不動産売買の承認について提案した場合、当該提案につき株主全員が書面により同意したときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされますので、株主全員の書面による同意があれば、株主総会を開催することなく会社・取締役間の不動産売買を承認することができます。

 

登記添付書類
所有権移転登記の申請の際に、登記原因(売買)につき承諾があったことを証する書面の提出が必要になります。

 

(1)株主総会の開催により承認した場合
承認決議に係る株主総会議事録を添付します。

 

会社法では、株主総会へ議事録への記名押印に関して何ら規定されていませんが、登記申請用に添付する株主総会議事録への記名押印には、一定の決まりがあるので議事録の作成には注意が必要です。

 

議事録作成者の記名押印
当該株主総会議事録には、その作成者が記名押印しなければなりません。
作成者とは、書面を事実上作成した者ではなく、文書に示された意思表示等の主体である作成名義人という意味であり、通常、会社の代表取締役が作成者になります。

 

議事録への押印は、代表取締役が法務局(登記所)に届け出ている印鑑(会社実印)で行います。
当該議事録には、押印した者の印鑑証明書を添付する必要があります。

 

(2)株主全員による書面決議により承認した場合
@株主総会議事録
株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容を記載した株主総会議事録を作成し、当該議事録を提出します。

 

記名押印に関しては、株主総会を開催した場合の株主総会議事録と同様に、議事録作成者である代表取締役が、法務局(登記所)に届け出ている印鑑で押印します。印鑑証明書の添付も必要になります。

 

A株主全員の同意書
上記@の株主総会議事録に代えて、株主全員の同意書を添付することもできます。

 

同意書には、同意した株主が署名押印又は記名押印しているものでなければなりません。
押印は、市町村に登録している印鑑(個人実印)をもって行います。

 

当該同意書には、押印した者の印鑑証明書を添付する必要があります。

 

 

取締役会設置会社と取締役の不動産売買の場合

1 取締役会の承認決議
取締役会設置会社とその取締役との間で不動産売買を行うときは、取締役会の承認が必要になります。

 

議案につき特別利害関係を有する取締役は、決議に加わることができず、不動産売買の承認決議において、不動産売買の当事者である取締役は特別利害関係を有する取締役に該当し、決議に加わることができません。

 

2 取締役全員による書面決議
取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案した場合において、取締役(当該事項について議決に加わることができる者に限る)の全員が書面により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べた場合を除く)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨の定款の定めがある取締役会設置会社は、取締役の全員が書面により同意したときは、会社と取締役の不動産売買につき承認することができます。

 

登記添付書類
(1)取締役会で承認した場合
当該承認決議に係る取締役会議事録が必要になります。

 

取締役議事録への記名押印
会社法では、取締役会議事録を書面により作成したときは、出席取締役及び出席監査役が署名又は記名押印しなければならないとされています。
会社法上は、署名があれば、押印は不要ですし、押印する印鑑は必ずしも実印である必要はありません。
しかしながら、登記申請のために提出する取締役会議事録の場合、署名では足りず押印が求められ、且つ押印する印鑑についても決められています。

 

取締役会議事録には、出席取締役及び出席監査役が記名押印します。

 

取締役会議事録へ押印する印鑑は、代表取締役は法務局(登記所)に届け出ている印鑑(会社実印)で、代表取締役以外の取締役及び監査役は市町村に登録している印鑑(個人実印)になります。

 

当該議事録には、押印者の印鑑証明書を添付する必要があります。

 

会計限定監査役は取締役会の出席する義務はありませんが、任意に出席したときは、出席監査役として議事録へ記名押印する必要があります。

 

(2)取締役全員による書面決議により承認した場合
取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容を記載した取締役会議事録を作成し、当該議事録を提出します。

 

当該議事録は代表取締役が作成し、代表取締役が法務局に届け出ている印鑑(会社実印)で押印します。
監査役会設置会社の場合は、当該提案につき監査役が異議を述べなかったことを証する書面の提出が必要になります。

 

この書面は、取締役会議事録に監査役が異議を述べなかった旨の記載をすることで監査役が異議を述べなかったことを証する書面に代えることができます。

 

当該議事録に監査役の記名押印が必要であり、監査役が市町村に登録している印鑑で押印します。

 

 

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