農地贈与と登記手続き

農地を贈与するには、農地の所有者(贈与者)と農地をもらう人(受贈者)が贈与契約を締結します。

 

宅地等の贈与と違うところは、農地を贈与するには、農地法に定める許可等を得ることが必要となるところです。

 

農地を農地として贈与(移転)する場合は農地法第3条許可が、農地を宅地等に転用して贈与(移転)する場合は、農地法第5条許可が必要になります。

 

また、農地法の許可書等は、贈与による所有権移転登記の申請の際の添付書類の一部になります。

 

農地法の許可等は、農地贈与の効力要件とされており、農地法の許可等を受けていない農地の贈与は無効と解されています。

 

また、無許可で農地の引き渡しを受け、耕作等を行えば、農地法違反になりますので、注意してください。

農地法第3条許可

耕作目的で農地を移転する場合に必要な許可
農地を農地のまま贈与(移転)する場合は、農地法第3条の許可が必要になります。

 

許可手続
申請人(贈与者及び受贈者)が連署で、許可申請書を農業委員会に提出します。

 

農業委員会は、当該申請が許可の要件を充足しているか審査し、すべての許可要件を満たしていれば、申請人に許可書を交付します。

 

許可要件

全部効率利用要件 農地の権利を取得しようとしている者又はその世帯員等が、権利を有している農地及び許可申請に係る農地のすべてについて、効率的に利用して耕作等を行うことが認められるかどうか
農地所有適格法人要件 農地の権利を取得しようとしている者が法人の場合、当該法人が農地所有適格法人かどうか
農作業常時従事要件 農地の権利を取得しようとしている者又はその世帯員等が、取得後において行う耕作等に必要な農作業に常時従事する(年間150日以上)と認められるかどうか
下限面積要件 取得後の農地面積の合計が50a(北海道は2ha)以上あるかどうか(農業委員会が地域の実情に応じて下限面積を別に定めている場合は、その面積以上)
地域との調和要件 耕作の内容、位置及び規模からみて農地の集団化、農作業の効率化、その他の周辺地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生じることがないかどうか

上記の要件からもわかるように、農地は、農業経営に従事している者(農家)に対してでなければ贈与することができません。

市街化区域内の農地でも許可が必要
農地を耕作目的で贈与する場合、当該農地が都市計画法で定める市街化区域内にある農地であっても、農業委員会の許可を得る必要があります

 

農業後継者への贈与

農業後継者である長男等に農地を贈与する場合でも、農地法第3条の許可が必要になります。

 

農地法第3条の許可について、世帯単位でその可否を判断しますので、現経営者が農地法の許可要件を満たして農業経営しているのであれば、農業に従事している後継者への農地贈与は一般的には、許可の要件を満たしているといえるでしょう。

 

農業非従事者への贈与

農業に全く従事していない子への農地の贈与は、農業委員会の許可を得ることはできません。

 

現在は農業に従事していないが、将来農業経営を引き継ぐ意思がある場合、農業に従事し農業委員会の許可を得ることを条件とした農地贈与契約を締結しておくことは可能です。

 

この場合、当該農地について、農地法第3条の許可を得ることを条件とする、条件付所有権移転仮登記をすることができます。

 

ただし、仮登記を経由したとしても、農地の所有者は依然贈与者のままですので、条件付受贈者に農地を引き渡し耕作させることは農地法違反行為に当たります。

 

 

農地法第5条許可

転用目的で農地を移転する場合に必要な許可
農地を宅地等に転用して贈与(移転)する場合は、農地法第5条の許可が必要になります。

 

許可を得るためには、農業委員会を経由して都道府県知事に申請書を提出します。

市街化区域内農地の場合は届出でOK
当該農地が市街化区域内にある農地であれば、都道府県知事の許可を得る必要はなく、事前に農業委員会に届けることで農地を転用して贈与することができます。

 

農地法第5条の許可基準

転用許可を得るためには、立地基準及び一般基準のいずれも満たす必要があります。

 

1・立地基準

許可の難易度 農地の種類 転用の可否 転用の可否 例外
高い 農用地区域内農地 農用地区域内にある農地 原則不可
第一種農地 農農用地区域内にある農地用地区域外にある農地でおおむね10ha以上の一団の農地、又は土地改良事業施行区域の農地で、良好な営農条件の有する農地 原則不可

農業用施設
土地収用法認定事業
仮設工作物の設置
市街地立地が困難、不適当
既存施設拡張など

甲種農地 第一種農地のうち市街化調製区域内で高性能機械による営農に適する農地又は土地改良事業完了後8年以内の農地 原則不可

農業用施設
土地収用法認定事業
仮設工作物の設置
既存施設拡張など

第二種農地 市街地化が見込まれる地域にある農地 場合により許可
低い 第三種農地 市街地を形成している地域又は市街地化の傾向が著しい地域にある農地 原則許可

 

2・一般基準

@農地を転用して、転用目的に供されることが確実であると認められること

 

A周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められないこと

 

B一時的な利用のために農地を転用しようとする場合には、その利用後に耕作することができるように元に戻すことが確実であると認められること

 

農地贈与の登記申請手続

登記申請手続きは、宅地等の贈与による所有権移転登記の申請と変わるところはありません。
贈与者と受贈者が共同して管轄の法務局に贈与による所有権移転登記を申請します。

 

登記必要書類
・贈与者の登記識別情報(又は登記済権利証
・贈与者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
・受贈者の住民票の写し
・固定資産税評価証明書
・登記原因証明情報(農地贈与契約書等)
・農地法の許可書(又は届出受理通知書)

 

登録免許税
贈与に所有権移転登記の申請時に納付する登録免許税の額は、固定資産税評価額の2%です。

 

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