相続登記の義務化についてわかりやすく解説

ご存じでしょうか?相続登記の申請が義務化されます。

 

相続登記とは不動産の名義変更の手続きのこと
相続登記とは、不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合、その登記名義を相続人に変更する手続きのことをいいます。
相続登記の手続きは、不動産の所在地の登記所(法務局、地方法務局又はその支局)で行います。

 

相続登記の申請は任意から義務へ
今までは、不動産を相続した者の任意であった相続登記の申請が義務化されることになりました。

 

 

相続登記が義務化された背景

所有者不明土地の増大
国土交通省の調査によると、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、又は所有者は分かってもその所在が不明で連絡を取ることができない土地、いわゆる「所有者不明土地」の面積は、約410ヘクタールにも上るものと推計されています。(平成28年時点)

 

相続登記の放置が所有者不明土地発生の原因?
所有者不明土地が発生する原因の一つに、相続登記の申請が義務ではないため、相続が発生しても相続登記が適切に行われていないことが指摘されてきました。

 

所有者不明土地の発生・拡大がもたらす悪影響
所有者不明土地は、円滑な民間取引や公共事業の妨げとなっており、所有者不明土地の発生を防止、かつ、解消することが喫緊の課題とされていたところ、

 

申請の義務化により相続登記の促進を図る
今般、所有者不明土地の発生を防止するための措置の一つとして、不動産を相続した者に、相続登記の申請義務を課すことになりました。

 

相続登記の義務化はいつから?

相続登記の義務化は、令和6年4月1日からスタートします。

 

過去の相続も対象に
令和6年4月1日以後に開始した相続だけでなく、それより前に開始した相続であっても、相続登記がなされていないものは、相続登記の義務化の対象となります。

 

相続登記の義務化に関係がある人は?

相続登記の義務化に関係がある人は、次の人です。

 

@令和6年4月1日以後、相続により不動産を取得した相続人
※相続には、遺産分割、特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)も含まれます。

 

A令和6年4月1日以後、遺贈により不動産を取得した相続人
※遺贈により不動産を取得した場合であっても、受遺者が遺贈者の相続人でない場合は、義務化の対象外です。

 

B令和6年4月1日より前に開始した相続により不動産を取得した相続人で、未だ相続登記の申請を行っていない相続人

 

C令和6年4月1日より前に、遺贈により不動産を取得した相続人で、未だ遺贈による所有権移転登記の申請を行っていない相続人

 

相続登記の義務化により、いつまでに相続登記をしなければならないのか?

原則3年以内の申請が必要

自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

相続開始以前より、被相続人所有の不動産を認識しており、かつ、被相続人が死亡したことをその日のうちに知った場合であれば、被相続人の死亡日から3年以内に相続登記を申請しなければならないこととなります。

 

被相続人の死亡後に、被相続人所有の不動産が発見された場合は、不動産が発見された日から3年以内に相続登記を申請しなければならないこととなります。

 

遺産分割により不動産を相続した場合
遺産分割により不動産を相続した相続人は、遺産分割の日から3年以内に、遺産分割の結果を反映した相続登記を申請しなければなりません。

 

令和6年4月1日より前に開始した相続の場合
令和6年4月1日より前に開始した相続によって不動産を取得した場合であっても、相続登記をしていない場合は、相続登記の申請義務の対象となることは前述の通りですが、申請期間については3年間の猶予期間が設けられています。

 

自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、不動産を取得したことを知った日又は改正法施行日(令和6年4月1日)のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を申請しなければならないとされています。

 

令和6年4月1日より前に開始した相続により不動産を取得したことを知っていた場合、令和9年3月31日(令和6年4月1日から3年間)までに相続登記を申請しなければならないこととなります。

 

相続登記の義務化後の相続人の対応

相続登記の義務後、不動産を相続した相続人がなすべき対応について説明します。

 

相続人間に争いがなく、早期に遺産分割が成立する見込みがある場合の対応
遺産分割が成立した場合、遺産分割により不動産を取得した相続人は、遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果を踏まえた相続登記を申請します。

 

この遺産分割の結果を踏まえた相続登記を申請することにより、相続登記の申請義務を履行したことになります。

 

遺産分割は成立したものの、諸事情により相続開始から3年以内に遺産分割の結果を踏まえた相続登記を申請できない場合は、相続開始から3年以内に相続人申告登記の申出を行うか、又は法定相続分による相続登記を申請すれば、相続登記の申請義務を履行したことなります。

 

ただし、遺産分割により不動産を取得した相続人は、依然、遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果を踏まえた相続登記を申請しなければなりません。

※相続登記の申請期間は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、不動産を取得したことを知った日から始まりますが、ここでは、便宜、相続開始日(被相続人の死亡日)に、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、不動産を取得したことを知ったものとします。

 

相続人間に争いがあるなどにより、早期に遺産分割の成立が見込めない場合の対応
「連絡が取れない相続人がいる」、「遺産分割につき相続人間で争いがある」などにより、当分の間、遺産分割が成立する見込みがない場合、相続開始から3年以内に相続人申告登記の申出を行うか、又は法定相続分による相続登記を申請すれば、相続登記の申請義務を履行したことなります。

 

その後、遺産分割が成立した場合、遺産分割により不動産を取得した相続人は、遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果を踏まえた相続登記を申請しなければなりません。

 

特定財産承継遺言があった場合
特定財産承継遺言により不動産を取得した相続人は、当該遺言により不動産を取得したことを知った日から3年以内に、遺言の内容を踏まえた相続登記を申請しなければなりません。

 

なお、特定財産承継遺言が公正証書遺言、又は法務局保管制度を利用した自筆証書遺言以外の場合、相続登記を申請する前提として家庭裁判所による検認手続きが必要になります。

 

不動産の遺贈があった場合
遺贈により不動産を取得した相続人は、当該遺贈により不動産を取得したことを知った日から3年以内に遺贈による所有権移転登記を申請しなければなりません。

 

なお、遺贈が公正証書遺言、又は法務局保管制度を利用した自筆証書遺言以外でなされている場合、遺贈により所有権移転登記を申請する前提として家庭裁判所による検認手続きが必要になります。

 

相続登記の申請義務に違反した場合の罰則

正当な理由がないのに、相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の処せられることになります。

過料とは、行政上の義務違反に対して科す金銭罰のうち、刑法上の刑罰以外のものを指します。
過料は、刑法上の刑罰である罰金とは異なりますので、過料に処せられたとしても前科はつきません。

 

法務省より公表された相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープランにより、相続登記の申請義務化の運用方針について示されていますので、紹介します。(以下要約したものになります。)

 

過料通知に先立ち催告を行う
登記官は、相続登記の申請義務に違反があった場合でも、直ちに管轄地方裁判所に過料通知をするのではなく、申請義務に違反した者に対して、相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、正当な理由なくその申請がされない場合に限り、過料通知を行うものとされています。

 

相続登記の申請義務に違反した者の把握方法
申請義務違反者の把握は、登記官が登記申請の審査の過程等で把握した情報により行うとされています。

 

「正当な理由」があると認められる場合
正当な理由がないのに、相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の処せられることになります。

 

逆に言えば、申請期間内に相続登記の申請をしなかった場合であっても、正当な理由があれば過料の適用対象外となります。

 

正当な理由の判断については、登記官において、相続登記の申請義務を負う者の具体的事情を丁寧に確認した上で行うとものとされています。

 

なお、一般的には、以下のような事情があれば、相続登記の申請をしないことにつき「正当な理由」があるものとされています。

・数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

 

・遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているため不動産の帰属主体が明らかにならない場合

 

・相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

 

・相続登記の申請の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

 

・相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担すない場合ない場合

上記は、あくまでも一例であり、正当な理由の有無について、これらの場合に限定される訳ではありません。

 

相続登記ってどうしたらいいの?(相続登記の相談窓口)

不動産を相続した場合、相続登記を申請しなければならないことは理解しましたが、何から始めたらよいのか、全く分からない方も多いのではないでしょうか?
ここでは、相続登記でお困り方の相談先をご紹介します。

 

全国の法務局
完全予約制の登記手続案内を行っています。
詳細は、最寄りの法務局のホームページをご確認ください。

 

各都道府県の司法書士会
相談センター等を設置して無料相談を実施しています。
詳細は、最寄りの司法書士会のホームページをご確認ください。

 

司法書士事務所
相続登記の手続きに関する専門家は司法書士です。

 

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司法書士八木事務所では、相続登記(不動産相続による所有権移転登記)に関するご相談、ご依頼を承っております。
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