不動産売買の売主又は買主が死亡した場合の登記手続

不動産の売買契約成立後、登記を行う前に、契約当事者である売主又は買主が死亡してしまった場合の登記手続きについて解説します。

 

不動産の売買は、契約成立時に買主は売主へ手付金を支払い、契約成立後、1〜2ヶ月の内に、残代金全額を支払う(決済)のが一般的です。
不動産の売買契約では、買主が売主へ残代金全額を支払ったときに、当該不動産の所有権が売主から買主へ移転する旨の所有権移転時期に関する特約を定めるのが通常です。

 

登記未了の内に、売買契約の当事者である売主又は買主が死亡した場合、その死亡の時期が所有権移転の前か後かにより必要となる登記手続きが異なります。

 

【関連記事】不動産売買の登記手続(不動産の名義変更)

 

登記前に売主が死亡した場合

@買主へ所有権が移転する前に売主が死亡した場合
所有権移転時期を売買代金全額の支払時とする特約がある不動産売買において、売主が契約成立から売買代金全額の支払いを受ける前に死亡した場合、不動産の所有権は、まだ買主に移転しておらず、売主が所有権を有していたことになります。

 

売主死亡時に買主へ所有権が移転していないので、この不動産(の所有権)は売主の相続人が相続により取得することになります。

 

また、その相続人は売買契約上の売主の地位を承継することになり、買主へ当該不動産の所有権を移転する義務を負うことになります。

 

買主は、売主の地位を承継した相続人に売買代金全額を支払うことにより、購入した不動産の所有権を取得することになります。

 

登記手続は、直接売主から買主への所有権移転登記をすることはできず、売主の相続人への相続登記を行ってから、買主への所有権移転登記を行う必要があります。

 

令和3年4月1日売買契約成立(売主A・買主B)
 ⇒所有者A
令和3年4月30日売主A死亡(相続人Cが相続)
 ⇒所有者C
令和3年5月31日決済(買主B残代金支払い)
 ⇒所有者B
令和3年5月31日 所有権移転登記の申請(買主B・売主Aの相続人C)
※相続人Cへの相続登記は決済日前までに完了させておきますが、所有権移転登記の申請と連件で申請することもできます。

 

買主Bに所有権が移転するのは令和3年5月31日です。
A死亡から決済までの期間の所有者は、売主Aから当該不動産を相続した相続人Cです。
不動産の所有権は売主A⇒相続人C⇒買主Bと移転していますので、権利変動の過程を正確に登記するため、買主Bへの所有権移転登記を行う前提として、売主Aから相続人Cへの相続登記を省略することができないことになります。

 

A買主へ所有権が移転した後、所有権移転登記未了の内に売主が死亡した場合
実務では通常、売買代金の支払い(所有権移転時)と同時に所有権移転登記を行うので、このような状況はあまりないかもしれませんが、親族間の売買等では、所有権移転と同時に所有権移転登記を申請しないこともありますので、このような状況が全くないわけではありません。

 

この場合は、不動産の所有権は既に売主から買主へ移転していますので、相続登記を経由せずに、直接売主から買主へ所有権移転登記を行うことができます。

 

所有権移転登記の申請ですが、売主の相続人全員と買主が共同して行うことになります。

 

令和3年4月1日売買契約成立(売主A・買主B)
 ⇒所有者A
令和3年5月31日決済(買主B残代金支払い)
 ⇒所有者B(所有権移転登記の申請はしていない)
令和3年6月2日売主A死亡(相続人Cが相続)
 ⇒所有者B
令和3年6月30日 所有権移転登記の申請(買主B・売主Aの相続人C)

 

登記前に買主が死亡した場合

@買主へ所有権が移転する前に買主が死亡した場合
所有権移転時期を売買代金全額の支払時とする特約がある不動産売買において、買主が契約成立から売買代金全額を支払う前に死亡した場合、売買契約上の買主の地位を買主の相続人が承継することになります。
買主の相続人は売買代金を支払う法的義務を承継することになり、売買代金全額を支払うことにより不動産の所有権を取得することができます。
この場合、買主の相続人は、当該不動産を相続ではなく売買により取得することになります。

 

令和3年4月1日売買契約成立(売主A・買主B)
 ⇒所有者A
令和3年4月30日買主B死亡(相続人Dが相続)
 ⇒所有者A
令和3年5月31日決済(買主Bの相続人D残代金支払い)
 ⇒所有者D
令和3年5月31日 所有権移転登記の申請(買主Bの相続人D・売主A)

 

買主Bは所有権を取得する前に死亡したので、売主Aから買主Bへの所有権移転登記の申請は必要なく、売主Aから買主Bの相続人Dへ所有権移転登記を申請します。

 

A買主へ所有権が移転した後、所有権移転登記未了の内に買主が死亡した場合
この場合、買主の死亡前に所有権は買主へ移転しているので、売主から買主への所有権移転登記を申請します。ただし、登記申請時には、買主は死亡しているので、その申請は、買主の相続人(そのうちの1名でも可)と売主が共同して申請します。

 

買主の相続人は、買主が購入した不動産を相続により取得しますので、売主から買主への所有権移転登記完了後に、自己名義の相続登記を申請します。

 

令和3年4月1日売買契約成立(売主A・買主B)
 ⇒所有者A
令和3年5月31日決済(買主B残代金支払い)
 ⇒所有者B(所有権移転登記の申請はしていない)
令和3年6月2日買主B死亡(相続人Cが相続)
 ⇒所有者C
令和3年6月15日 売買による所有権移転登記の申請(買主Bの相続人D・売主A)

 

司法書士へのお問い合わせ

司法書士八木事務所では、不動産売買による所有権移転登記に関するご相談、ご依頼を承っております。
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
1 お電話によるお問い合わせ 
  052-848-8033

 

2 お問い合わせフォームからのお問い合わせ

 

お電話は平日10時から20時まで受け付けております。土日祝日は休業日ですが、事務所にいる時は対応いたしますので、一度おかけになってみてください。

 

お問い合わせフォームからのお問い合わせに対しては原則24時間以内に返信します。
(複雑で調査を要するお問い合わせは、回答までにお時間を頂くことがございます。)

 

正式なご依頼前に、見積手数料、相談料等の名目で費用を請求することは一切ございませんので、安心してお問い合わせください。

 

〒467−0056 
名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 
瑞穂ハイツ403号
司法書士八木隆事務所