不動産の個人間売買(契約・税金・登記)

 

宅地建物取引業者(不動産仲介業者)を介さずに不動産の売買を考えている方に知っておいてもらいたい、売買契約や登記手続のことについて説明致します。

【関連記事】不動産売買の登記手続(不動産の名義変更)

 

 

宅地建物取引業者を介さない売買はリスクあり

不動産を売却・購入する場合、宅地建物取引業者を介して取引するのが一般的ですが、親族や知人との間では、宅地建物取引業者を入れずに直接売買取引することがあります。

 

なお、直接売買する場合、宅地建物取引業者を介して売買する場合に比べて、相対的にトラブルが生じるリスクが高くなることを十分理解しておく必要があります。

不動産取引に携わる主な専門家
宅地建物取引士
物件調査、物件に関する重要事項の説明、売買契約書の作成等

 

司法書士
所有権移転登記(名義変更)の申請

 

土地家屋調査士
土地の測量、測量図面の作成等

 

税理士
譲渡所得税、不動産取得税等の申告

不動産売買においては、上記のような各専門家による役割分担がなされております。

 

直接売買では仲介手数料等を節約できるメリットがありますが、各専門家の専門分野に関する適切な助言を受けることができないデメリットがあります。

 

不動産売買で想定される主なトラブルについて

以下、不動産売買で生じることのある主なトラブルについて解説します。

 

@現況宅地・登記地目農地の土地売買
売買する土地が現況農地でなければ、農地法は適用されないのですが、登記は、形式的審査により行われますので、登記地目が農地であれば、農地売買による所有権移転登記の申請があったものとされ、添付書類として農業委員会の許可書等が求められます。
現況は宅地だが、登記地目は農地の土地を売買する場合、事前に農業委員会に相談する必要があります。

 

A売買代金を先払いとした場合
通常、不動産売買では、売買代金の支払いと物件の引き渡し・登記は同時に行います。
ただし、親族間での売買の場合、売買代金を先払いすることがあります。
先払いのリスクとして、後日、売主に登記の協力を求めたがそれに応じてくれないことが考えられます。
代金の先払いによって生じるリスクを回避するには、親族間であっても最低限、領収書等のやりとりをしておくべきです。

 

B売買代金
登記簿上の面積をもとに売買代金を決定する場合、後日実測したところ、登記簿面積と実測面積が異なった場合、清算するのかどうか、清算する場合どのような方法で清算金額を算出するのかを定めておかないと清算金でトラブルなることがあります。

 

C境界トラブル
隣地との境界が曖昧なまま土地売買を行うと、後日隣地所有者との間で境界について紛争になることがあります。売主は境界の明示に関してどの程度の義務を負うのか、売買契約書に定めておく必要があります。

 

D対象物件に他人の権利が設定されている場合
対象物件に抵当権、仮登記、差押等の他人の権利が登記されている場合、物件の引き渡しまでにこれら他人の権利を抹消することができるかどうか確認する必要があります。

 

また、対象物件の利用状況を確認する必要があります。
借地権が設定されている土地で、且つ対抗要件(借地権の登記又は建物の保存登記)を具備しているのであれば、買主はこの土地を利用することはできませんし、借家権が設定されている建物で借家人が占有しているのであれば、買主はこの建物を使用することはできませんので登記簿の確認だけでなく現地確認も必要になります。

 

 

不動産売買したときに発生する税金を知っておこう

不動産を売買すると様々な税金が発生します。
不動産を売買する場合、事前にどのくらいの税金がかかるのかを調べておかないと、後日想定していなかった額の税金が課税されることがありますので注意してください。

 

譲渡所得税

不動産を売却したときに売主に課税される税金です。

課税譲渡所得金額
課税譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除

譲渡価額 
・不動産の売却代金等
取得費 
・売却する不動産の購入代金、購入手数料等+その後支出した改良費、設備費等
譲渡費用 
・不動産を売却するために支出した費用(仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代等)
特別控除
・マイホームを売ったときの3,000万円まで控除等

譲渡所得税額
税額=課税譲渡所得金額×税率

 

【譲渡所得税の税率】

売却する不動産の所有期間 所得税 復興特別所得税 住民税
短期譲渡所得 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の不動産の売買 30% 2.1% 9%
長期譲渡所得 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年超の不動産の売買 15% 2.1% 5%

 

不動産取得税

不動産の買主に課税される税金

不動産取得税の税額
不動産の価格×税率

不動産の価格
家屋の新築
固定資産評価基準により評価した新築時の価格

 

宅地評価土地の取得
市町村の固定資産課税台帳の登録価格の2分の1(令和3年3月31日までに取得した場合)

 

その他の不動産の取得
市町村の固定資産課税台帳の登録価格

 

【税率】

土地 住宅用家屋 住宅用以外の家屋
3% 3% 4%

 

登録免許税

売買による所有権移転登記申請時に課税される税金

登録免許税額
土地 固定資産税評価額の15/1000(令和3年3月31までに申請した分)
建物 固定資産税評価額の20/1000

【関連記事】不動産売買の登録免許税

 

住宅用家屋の軽減税率
一定の要件を満たす住宅用家屋の売買による所有権移転登記の場合、軽減税率3/1000が適用

 

以下の要件を満たす住宅用家屋を売買により取得した場合の所有権移転登記

【要件(中古住宅)】
・自分自身が居住するための家屋であること
・床面積(区分所有家屋については専有床面積)が50平方メートル以上であること
・併用住宅の場合は、居住部分の割合が90%以上であること
・区分所有家屋については、建築基準法上の耐火または準耐火建築物であること
・取得後、1年以内に登記を受ける家屋であること(所有権移転登記の場合は、取得の原因が「売買」または「競落」であること
・取得の日前20年以内(登記簿に記録された家屋の構造が石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造、鉄筋コン クリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は25年以内)に建築された家屋であること、または、地震に対する安全性に 係る一定の基準に適合すること

 

【関連記事】登録免許税の軽減税率(住宅用家屋減税)

 

印紙税

不動産売買契約書には、契約金額に応じた額の収入印紙を貼付する必要があります。

 

平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される、不動産売買契約書について印紙税の税額が軽減されます。

 

【軽減税額】

売買契約書に記載された契約金額 税額
10万円を超え50万円以下のもの 200円
50万円を超え100万円以下のもの 500円
100万円を超え500万円以下のもの 1千円
500万円を超え1,000万円以下のもの 5千円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 3万円
1億円を超え5億円以下のもの 6万円
5億円を超え10億円以下のもの 16万円
10億円を超え50億円以下のもの 32万円
50億円を超えるもの 48万円

 

 

売買による所有権移転登記の手続

売買契約にもとづき不動産の所有権が買主に移転して時は、所有権移転登記を申請し登記名義を売主から買主に移す必要があります。

 

【売買による所有権移転登記】

申請する登記 所有権移転登記
申請する場所 不動産の所在地を管轄する法務局
申請人 買主と売主の共同申請
登録免許税

土地売買
固定資産税評価額の15/1000

建物売買
固定資産税評価額の20/1000

必要な書類

・登記申請書
・登記原因証明情報
・売主の登記識別情報又は登記済証
・売主の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
・買主の住民票
・固定資産税評価証明書
・住宅用家屋証明書
※住宅用家屋の軽減税率の適用を受ける場合
【関連記事】売買による所有権移転登記の必要書類

 

売買による所有権移転登記の際の注意点

@売主の現住所と登記簿上の住所が異なる場合
この場合、登記名義人住所変更の申請が必要になります。
この登記を事前又は所有権移転登記と連件で申請しないと、所有権移転登記の申請が却下されますので注意が必要になります。(婚姻等により現在の氏名と登記簿上の氏名が異なる場合も同様)

 

A売主が登記識別情報又は登記済証を提供できない場合
所有権移転登記を申請するには、法務局に売主が売却する不動産を購入した際に交付をうけた登記識別情報又は登記済証を法務局に提供(提出)する必要がありますが、紛失等によりこれらを提供できない場合は、次の方法により登記識別情報等の提供に代えることができます。

 

所有権移転登記申請を司法書士に委任する場合
・登記申請を受任した司法書士の作成に係る本人確認情報の提供
・公証人の認証を受けた売主の委任状を提供

 

本人申請により所有権移転登記を申請する場合
・公証人の認証を受けた登記申請書を提供

 

B住宅用家屋の軽減税率の適用を受ける場合
住宅用家屋の軽減税率の適用を受けるためには、登記申請時に、住宅用家屋証明書を添付する必要があり、登記した後で証明書を提出しても軽減税率の適用を受けられませんので、住宅用家屋の軽減税率の適用を受けようとする場合は、注意が必要になります。

 

 

司法書士へのお問い合わせ

司法書士八木事務所では、不動産売買による所有権移転登記に関するご相談、ご依頼を承っております。
お気軽にお問い合わせください。

 

宅地建物取引業者を介さずに不動産売買契約をおこなうので、登記手続き等にご不安を感じられている方は司法書士に一度ご相談ください。

 

もちろん、宅地建物取引業者を介して不動産を購入する方でも、所有権移転登記のご相談・ご依頼を承りますのでお気軽にお問い合わせください。

 

司法書士手数料

・不動産売買契約書の作成 22,000円〜
・所有権移転登記の申請  33,000円〜
・登記原因証明情報の作成 11,000円
・決済立会い手数料    11,000円〜
・住宅用家屋証明書取得  11,000円

 

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お電話は平日10時から20時まで受け付けております。土日祝日は休業日ですが、事務所にいる時は対応いたしますので、一度おかけになってみてください。

 

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(複雑で調査を要するお問い合わせは、回答までにお時間を頂くことがございます。)

 

正式なご依頼前に、見積手数料、相談料等の名目で費用を請求することは一切ございませんので、安心してお問い合わせください。

 

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