農地売買の登記手続

農地の売買

農地売買により、所有権を買主に移転するには、農地法の定めるところにより、農業委員会の許可等を受ける必要があります。

 

また、農地売買による所有権移転登記の申請の際、農業委員会の許可書等を添付する必要があります。

 

 

農地法第3条の許可(耕作目的の農地売買)

1 耕作目的の農地売買
耕作目的(農地を農地のまま移転)で農地を売買する場合、原則、農地法第3条第1項の許可が必要になります。

 

農地法第3条第1項の許可は、耕作目的で農地に関する権利(所有権、賃借権等)を移転する場合に、必要となる許可です。

 

許可を受けるには、当事者連署の許可申請書を農業委員会に提出します。

 

農地法の許可は所有権移転の効力発生要件ですので、農地の売買契約を締結しても農業委員会の許可を受けなければ買主に農地の所有権は移転しません。

 

市街化区域内ある農地であっても、耕作目的で農地を移転するには、農業委員会の許可が必要になります。
また、売買以外では、農地の贈与、農地の交換、農地の財産分与等により農地を取得する場合にも農業委員会の許可を受ける必要があります。

 

なお、相続により農地を取得した場合は、農地法の許可は不要です。(但し、相続した旨の届出が必要になります。

 

2 農地売主の義務
農地の売主は買主に対して農地法の許可申請手続きをなすべき義務があります。
この買主の売主に対する『許可申請協力請求権』は10年間行使しないと時効により消滅します。
また、農地法の許可により所有権移転の効力が生じた後は、買主のために所有権移転登記をなすべき義務を負います。

 

3 農地の所有権移転時期
@売買契約締結後に許可があった場合
許可書が到達した日に、所有権移転の効力が生じます。
ただし、売買契約で代金完済時に所有権移転の効力が生じる旨の特約があり、許可書到達後に売買代金を完済したときは、売買代金完済時に所有権移転の効力が生じます。

 

A許可があった後に売買契約を締結した場合
売買契約を締結した日に、所有権移転の効力が生じます。
ただし、売買契約で代金完済時に所有権移転の効力が生じる旨の特約があり、売買契約締結後に売買代金を完済したときは、売買代金完済時に所有権移転の効力が生じます。

 

農地法第5条の許可(転用目的の農地売買)

1 転用目的の農地売買
転用目的(農地を農地以外の地目に変更)で農地を売買する場合、原則、農地法第5条第1項の許可が必要になります。

 

農地法第5条第1項の許可は、転用目的で農地に関する権利(所有権、賃借権等)を移転する場合に、必要となる許可です。

 

許可を受けるには、当事者連署の許可申請書を農業委員会を経由して都道府県知事(又は農林水産大臣)に提出します。

 

2 市街化区域内農地の場合
農業委員会への事前届出
市街化区域内にある農地を転用目的で売買する場合、あらかじめ農業委員会に届け出たときは、都道府県知事等の許可を受ける必要はありません。

 

届出が受理されると交付される届出受理通知書は、所有権移転登記の添付書類になります。

 

この届出は、所有権移転の効力発生要件とされており、適法な届出書が農業委員会に到達した日にその効力が生じるとされています。

 

農地売買の登記手続

農地売買による所有権移転登記の申請には、一般的に必要とされる書類(登記済権利証、売主の印鑑証明書、買主の住民票等)の他、農業委員会の許可書(又は届出受理通知書)を添付する必要があります。

 

1 許可書の記載
@許可書の農地の表示が登記簿と相違する場合
農地法の許可書に記載された農地の表示(所在、地番、地積等)と、登記簿上の表示に相違がある場合、その許可書を添付してなされた登記申請は、原則受理されません。
ただし、その相違が多少の相違で有り、他の情報から同一物件であると認めることができる場合は、その許可書を添付してなされた登記申請であっても受理することができるとされています。

 

A許可書に記載された買主と申請書に記載され権利者(買主)が相違する場合
許可書に記載された買主と異なる者を権利者とする所有権移転登記の申請は受理されません。
また、許可書に記載された買主が登記名義人となる所有権移転登記であっても、許可書に記載されていない者との共有名義にする所有権移転登記の申請は受理されません。

 

B許可書に記載された当事者の表示の誤記がある場合
許可書に記載された当事者の氏名、住所に誤記がある場合、正しい氏名、住所に許可書を訂正した上で、訂正後の許可書を添付します。

 

許可後に買主が住所移転したことにより許可書に記載された買主の住所と現住所が相違する場合、住民票等を添付することによりその者の同一性が判明するときは、許可書を訂正する必要はないとされています。

 

2 売主死亡後に許可書が到達した場合
農地の売主死亡後に農地法の許可があった場合には、死亡した売主が記載された許可書をもって所有権移転登記を申請することができます。
なお、買主への所有権移転登記を申請する前提として、売主の相続登記を申請する必要があります。

 

売主の相続人は農地売買契約の売主の地位を承継します。
農地の所有権は、許可書が買主に到達したときに買主へ移転することから、許可書到達前に、売主が死亡した場合は、農地の所有権は今だ売主にあったことになり、売主に相続が開始したことからその所有権は売主の相続人に移転することになります。

 

権利変動の過程を正確に登記簿に反映させるために、売主の相続人名義の相続登記を省略することができないとされています。

 

【関連記事】不動産売買の売主又は買主が死亡した場合の登記手続

 

3 登記申請手続
登記申請手続きは、宅地等の所有権移転登記の申請と変わるところはありません。
買主と売主が共同して管轄の法務局に所有権移転登記を申請します。

 

【関連記事】不動産売買の登記手続(不動産の名義変更)

 

4 登記必要書類
・売主の登記識別情報(又は登記済権利証
・売主の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
・買主の住民票の写し
・固定資産税評価証明書
・登記原因証明情報(農地売買契約書等)
・農地法の許可書(又は届出受理通知書)

 

【関連記事】売買による所有権移転登記の必要書類

 

5 登録免許税
所有権移転登記の申請時に納付する登録免許税の額は、固定資産税評価額の2%です。

 

土地売買の軽減税率
ただし、令和3年3月31日までの間に登記を受ける場合は、土地売買(農地売買)による所有権移転登記の登録免許税率は1.5%の軽減税率が適用されます

 

【関連記事】不動産売買の登録免許税

農地の仮登記

農地の売買契約を締結したが、農地法の許可等を受けていないときは、所有権は売主から買主へ移転しないので、所有権移転登記を申請することはできませんが、将来、農地法の許可等を受けることを条件とした場合、所有権移転の仮登記を申請することができます。

 

・農地法第3条の許可を受けることを条件に売買契約を締結した場合(耕作目的の農地売買)
『年月日売買(条件 農地法第3条の許可)』を登記原因として条件付所有権移転仮登記を申請することができます。

 

・農地法第5条の許可を受けることを条件に売買契約を締結した場合(転用目的の農地売買)
『年月日売買(条件 農地法第5条の許可)』を登記原因として条件付所有権移転仮登記を申請することができます

 

・農地法第3条の届出をすることを条件に売買契約を締結した場合(転用目的の市街化区域内農地の売買)
『年月日売買(条件 農地法第5条の届出)』を登記原因として条件付所有権移転仮登記を申請することができます

 

・農地法の許可と売買代金完済を条件に売買契約を締結した場合
『年月日売買(条件 農地法第3条の許可及び売買代金完済)』を登記原因として条件付所有権移転仮登記を申請することができます

 

1 仮登記の申請手続
買主と売主が共同して管轄の法務局に条件付所有権移転仮登記を申請します。
仮登記の申請について売主の承諾書(印鑑証明書付)があれば、買主が単独で仮登記の申請ができます。

 

2 登記必要書類
・売主の印鑑証明書
・登記原因証明情報(条件付売買契約書等)
・固定資産税評価証明書

 

3 登録免許税
所有権移転仮登記の申請時に納付する登録免許税の額は、固定資産税評価額の1%です。

 

登記に必要な費用

所有権移転登記の申請には、登録免許税が課税されます。
また、司法書士に申請手続きを依頼する場合、司法書士手数料がかかります。

 

登録免許税

農地売買の所有権移転登記の登録免許税の額
固定資産税評価額×1.5%(※)

軽減税率
売買による所有権移転登記の登録免許税率は2%が本則ですが、特例措置により令和3年3月31日までに土地売買の所有権移転登記を受ける場合の登録免許税率は1.5%になっています。

購入する農地の固定資産税評価額の総額が300万円の場合の登録免許税の額
300万円×1.5%=4万5千円

 

登録免許税の負担者
契約により納税者を定めることができますが、申請する登記により登記上利益を受ける者(売買による所有権移転登記であれば買主)が登録免許税を負担するのが慣行になっています。

 

登録免許税の納税方法
登記申請書に、登録免許税相当額の印紙又は領収書を貼付することにより納付します。
また、オンラインで登記申請する場合は、ネットバンキングを利用することにより納付することができます。

 

司法書士手数料(報酬)

司法書士に登記手続を依頼する場合に発生する費用です。
司法書士に支払う手数料の額、報酬体系等は、各事務所で異なります。

 

当事務所に農地売買による所有権移転登記を依頼した場合の手数料(報酬)
所有権移転登記の申請 33,000円〜
決済立会い手数料 11,000円
(決済場所によって出張手数料が発生する場合あり)
以上、買主様ご負担

 

登記原因証明書作成費用 11,000円
権利証(登記識別情報通知書)がない場合、要相談
以上、売主様ご負担

 

 

司法書士へのお問い合わせ

司法書士八木事務所では、不動産売買による所有権移転登記に関するご相談、ご依頼を承っております。
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
1 お電話によるお問い合わせ 
  052-848-8033

 

2 お問い合わせフォームからのお問い合わせ

 

お電話は平日10時から20時まで受け付けております。土日祝日は休業日ですが、事務所にいる時は対応いたしますので、一度おかけになってみてください。

 

お問い合わせフォームからのお問い合わせに対しては原則24時間以内に返信します。
(複雑で調査を要するお問い合わせは、回答までにお時間を頂くことがございます。)

 

正式なご依頼前に、見積手数料、相談料等の名目で費用を請求することは一切ございませんので、安心してお問い合わせください。

 

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